句意は「くやしいことだ。私も欲しかった芭蕉先生の紙衾は、すでに竹戸にとられてしまっていたよ」
芭蕉が竹戸に贈った「紙衾」についての、もう一つの後日談である。遅れて大垣に着いた越人もこんな句を作って話題に参加している。思ったそのままの句であるが、曽良と同様に竹戸をからかって、悔しがって見せているのが楽しい。先輩にあたるであろう俳人たちにもてはやされて竹戸もさぞうれしかったに違いない。
みんなが興奮状態でこんなにも楽しそうなのは、もちろん芭蕉が『おくのほそ道』の最終地大垣に無事到着したという昂りがあってのことである。
なお「左比志遠理(さびしをり)」は、掲載された本の名前です。
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(文) 安居正浩 |