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兼題解説 紅葉・野分 |
紅葉(もみじ・もみぢ) |
〔本意・形状〕 |
晩秋、気温が急に下がると、落葉樹の葉が赤や黄色に変わる。これらを
総称して「もみじ」という。「もみじ」の名は白い絹地を赤く染めた、
「紅絹(もみ)」からきたもので、楓の紅葉がよく似ているので楓がもみじの名を占有するようになったと言われる。
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〔季題の歴史〕 |
『万葉集』秋八・秋雑に「経(たて)もなく緯(ぬき)も定めず娘子らが織れる黄葉(もみぢ)に霜な降りそね」、『古今六帖』に「見る人もなくて散りぬる奥山の黄葉は夜の錦なりけり』など、秋の代表的景物としてたえず詠われてきた。
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〔類題・傍題〕 |
黄葉 もみじ葉 色葉 色見草 紅葉の錦 梢の錦 下紅葉 村紅葉 はし紅葉 入紅葉 紅葉の淵 紅葉の川 紅葉の筏 |
〔例句〕 |
・静かなり紅葉の中の松の色 越人 |
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・山くれて紅葉の朱をうばひけり 蕪村 |
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・日の暮れの背中淋しき紅葉かな 一茶 |
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・赤松のまぎれずあかし夕紅葉 水原秋桜子 |
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・障子しめて四方の紅葉を感じをり 星野立子 |
(堀口希望) |
野分(のわき) |
〔本意・形状〕 |
秋に吹く強風で、ときに暴風となり草木をたおして吹きすぎる。野分の風の省略した形で野分けともいう。
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〔季題の歴史〕 |
『源氏物語』「野分」では野分の去った後の六条院を描いている。
『千載集』に「野分する秋のけしきを見る時は心なき人あらじとぞ思ふ 季通」、『新古今集』に「野分せし小野の草ぶし荒れ果ててみ山に深きさを鹿の声 寂連」。古くから、野分は、それが吹き過ぎたあとの荒れた景色にあわれの風情をつよく抱いている。 |
〔類題・傍題〕 |
野わけ 野分立つ 野分波 野分雲 野分後 野分晴 夕野分 |
〔例句〕 |
・猪もともに吹かるる野分かな 芭蕉
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・吹き飛ばす石は浅間の野分かな 芭蕉
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・寝むしろや野分に吹かす足のうら 一茶
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・大いなるものが過ぎ行く野分かな 高浜虚子
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・野分雲夕焼けしつゝ走り居り 高浜年尾
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(根本梨花) |
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