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兼題解説 稲妻・女郎花 |
稲妻(いなずま・いなづま) |
〔本意・形状〕 |
秋の夜、空中放電によって夜空に電光の走るのを稲妻という。雷が遠くにある場合には雷鳴は聞こえない。古来稲光(いなびかり)とも呼ばれ、米の豊作に関わりがあるとされてきた。雷が「神鳴り」として、音を主として考えられているのに対し、稲妻は「光」に注目した季語と云える。
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〔季題の歴史〕 |
「稲妻の光の間にも忘れじと云ひしは人のことにぞありける」と
『古今六帖』にもあるように古くから詠まれてきた。
「稲妻や闇の方行く五位の声 芭蕉」
「いなづまや昨日は東今日は西 其角」
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〔類題・傍題〕 |
稲光、稲の殿、稲の妻、稲つるみ、いなつるび、いなたま。 |
〔例句〕 |
・稲妻のかきまぜて行く闇夜かな 去来 |
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・いなづまや槙の夜雨のかわく迄 蓼太 |
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・稲妻や浪もてゆへる秋津島 蕪村 |
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・稲妻に近くて眠り安からず 漱石 |
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・稲妻のほしいまゝなり明日あるなり 波郷 |
(堀口希望) |
女郎花(をみなえし・をみなへし) |
〔本意・形状〕 |
秋の七草の一つで名前の知られた花である。山野に自生し茎は細長く
1メートル位になる。夏の終わり頃、黄色の小さな花が頭上に固まって咲く。一輪の花は五つに裂け、中に四本の雄しべと一本の雌しべがある。
オミナエシのオミナは女で、花のやさしさを見たてたもの、エシ・メシは、粟の飯のように細かい花であるところからいう。
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〔季題の歴史〕 |
その、ほっそりとして秋風になびく風情が古歌に愛されてきた。『古今和歌集』秋上に、「名にめでて折れるばかりぞ女郎花われ落ちにきと人に語るな」の遍昭の歌が女性のなまめかしさを思わせる。 |
〔類題・傍題〕 |
女郎花(じょろうか)、をみなめし、粟花(あわばな)、血目草(ちめぐさ) |
〔例句〕 |
・見るに我も折れるばかりぞ女郎花 芭蕉
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・萩薄わけつつ折るや女郎華 蕪村
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・一様に風来る中の女郎花 高野素十
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・いつの世に名づけし花や女郎花 森 澄雄
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・をみなへしといへばこころやさしくなる 川崎展宏
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(根本梨花) |
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