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兼題解説 青梅・納涼

青梅(あおうめ・あをうめ)
〔本意・形状〕 六月の梅雨のころになると、葉陰の青梅が急に目立つようになる。
この熟す前の清々しい青梅をもいで、梅干しや梅酒の材料とするのである。黄色く熟したものは、実梅(みうめ)という。
〔季題の歴史〕 『万葉集』巻三に「妹が家に咲きたる花の梅の花実にしなりなばかもかくもせむ」。梅は和歌の世界では、花や香りを詠われてきたが、近世になって、俳諧に「青梅」が夏の季題として取り入れられたとされる。
「うれしきは葉がくれ梅の一つかな 杜国」。『花火草』(寛永13)、 『初学抄』(寛永18)、『毛吹草』(正保2)に五月として所出。
〔類題・傍題〕 梅の実、実梅、梅売。
〔例句〕 ・青梅に眉あつめたる美人かな    蕪 村
  ・実の落ちる夜の音なり軒の梅    太 祇
  ・青梅や空しき籠に雨の糸      漱 石
  ・塩漬の梅実いよいよ青かりき    蛇 笏
  ・青梅に今日くれなゐのはしりかな  飴山実
(堀口希望)

納涼(すずみ)
〔本意・形状〕 夏の暑さを忘れるために、屋外や水辺などに涼を求めること。
浴衣姿で川風に吹かれる橋の上や、木陰のベンチなど、場所はさまざまである。冷房のない日本の夏を人々は工夫して過ごしていた。
〔季題の歴史〕 『千載佳句』『和漢朗詠集』『夫木和歌抄』に「納涼」として所出。
〔類題・傍題〕 涼む、門涼み、橋涼み、縁涼み、庭涼み、川涼み、磯涼み、夕涼み、宵涼み、夜涼み、涼み茶屋、涼み台、涼み船、舟涼み、納涼船。
〔例句〕 ・あつみ山や吹く浦かけて夕涼み     芭 蕉
  ・川風や薄柿着たる夕涼み        芭 蕉
  ・我が影を浅瀬に踏みてすずみかな    蕪 村
  ・涼みけりきめこまかなる布地着て    桂信子
  ・納涼船燈のかたまりとなりて航く    山口波津女
(根本梨花)