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兼題解説 冬籠・氷

冬籠(ふゆごもり)
〔本意・形状〕 冬の寒さを避けて外出を控え、温かくした部屋に籠もって暮らすこと。とくに雪の多い東北、北陸地方では炬燵や囲炉裏のそばに籠居して暮らす。
芭蕉の「冬籠りまたよりそはん此の柱」はよく知られている。
〔季題の歴史〕 『万葉集』では巻十・春雑に「冬ごもり春さり来ればあしひきの山にも野にも鶯鳴くも(枕詞で「冬木茂る」の意であった)。『古今集』冬には、「雪降れば冬ごもりせる草も木も春に知られぬ花ぞ咲きける」がある。
〔類題・傍題〕 冬ごもる 雪籠(ゆきごもり)
〔例句〕 ・先ず祝へ梅を心の冬籠り       芭蕉
  ・薪をわるいもうと一人冬籠      正岡子規
  ・五十にして冬籠りさへならぬなり  一茶
  ・夢に舞ふ能美しや冬籠        松本たかし
  ・読みちらし書きちらしつつ冬籠   山口青邨
(堀口希望)

氷(こほり)
〔本意・形状〕 気温が零度以下になると水は氷になる。冬はいろいろのものが氷る。
水道や井戸のポンプ。川や湖が氷るとその上でスケート遊びや、ワカサギ釣りも楽しい。海が氷ると砕氷船も閉じ込められたりする。
〔季題の歴史〕 氷は昔「ひ」と言い、のちに「こほり」と三字になったという。氷は秋の露の氷ったものという考え方があった。『夫木和歌抄』冬に「秋果てて枯野の草に結び置く氷ぞ露のかたみなりける 俊成卿女」がその例である。
〔類題・傍題〕 厚氷 氷の衣 氷面鏡(ひもかがみ) 氷の楔(くさび) 氷の蚕(こ) 氷の聲 氷の花
〔例句〕 ・氷上にかくも照る星あひふれず  渡辺水巴
  ・月一輪凍湖一輪光りあふ      橋本多佳子
  ・水よりも氷の月はうるみけり    鬼貫
  ・厚氷びしりと軋みたちあがる    加藤楸邨
  ・厚氷幾日金魚をとぢこめて     山口波津女
(根本文子)