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兼題解説 水鳥・師走(極月) |
水鳥(みずどり・みづどり) |
〔本意・形状〕 |
水に浮かぶ鳥、水上で暮らす鳥を言う。秋から冬にかけて日本に渡ってくる鳥が多い。鴨、雁、白鳥、鴛鴦等である。水に浮いたまま眠る姿を浮き寝鳥と言い、古来多く句にも詠まれてきた。
水鳥の啼くや月下の門の内 太祇
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〔季題の歴史〕 |
『古今六帖』水に、水鳥「水鳥のおのが浮べる心もて淵をも瀬とや思ひなすらむ」、『拾遺集』冬に「水鳥の下やすからぬ思ひにはあたりの水も氷らざりけり」。 |
〔類題・傍題〕 |
浮寝鳥(うきねどり)、浮鳥(うきどり) |
〔例句〕 |
・水鳥のおもたく見えて浮きにけり 鬼貫 |
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・鳥どもも寝入つてゐるか余呉の海 路通 |
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・つぶらなる氷の上の浮寝鳥 虚子 |
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・浮寝鳥一羽さめいてゆらぐ水 秋桜子 |
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・水鳥の夢宙にある月明かり 飯田龍太 |
(堀口希望) |
師走(しわす・しはす) |
〔本意・形状〕 |
陰暦十二月の異称。陽暦の一月頃にあたるが師走だけは陽暦の十二月にも使われている。語源については不明だが何となく人々の忙しく走り回る雰囲気が伝わってくる。たとえば『奥義抄』には「僧を迎えて仏名を行ひ、あるいは経読ませ、東西に馳せ走るゆえに、師はせ月といふを誤れり」とあり、やはり年末の慌ただしさが感じられる。
クリスマス、忘年会などの華やかな行事の中に、新年を迎える準備も行われる。
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〔類題・傍題〕 |
極月(ごくげつ)、臘月(ろうげつ)、春待月(はるまちづき)、梅初月(うめはつづき)、三冬月(みふゆづき)、弟月(おとこづき)。
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〔例句〕 |
・何に此の師走の市にゆくからす 芭蕉
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・かくれけり師走の海のかいつぶり 芭蕉
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・物ぬひや夢たたみこむ師走の夜 千代女
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・病む師走わが道或いはあやまつや 石田波郷
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・大空のあくなく晴れし師走かな 久保田万太郎
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(根本文子) |
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