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兼題解説 白雨(夕立)・卯花

白雨(はくう)
〔本意・形状〕 白雨、蒸し暑い夏の午後、発達した積乱雲が降らせる雨である。空が急に暗くなり大粒の雨が地面を叩きつけるように降る。しばしば雷鳴を伴う。
万葉の時代には秋の題として詠まれていたが、平安時代に夏の題として意識されてきたようである。
〔類題・傍題〕 夕立・ゆうだち・よだち・しらさめ・驟雨
〔例句〕 ・法隆寺白雨やみたる雫かな   飴山 実
  ・白雨来る熊野大瀧まくらがり  中西昭子
  ・漁るや白雨さなかもその後も  岩井英雅
(堀口希望)

卯の花(うのはな)
〔本意・形状〕 空木の花(うつぎのはな)の略。ユキノシタ科の落葉低木で日本全国の山野に分布し、初夏、白色五弁の花が枝先に群がって咲く。卯月の花の意ともいい、また、枝の中が空虚(うつろ)になっているので空木(うつぎ)の意とするなどの説がある。ヒメウツギ、タニウツギなど種類も多いがよく親しまれているハコネウツギは、スイカズラ科である。
〔季題の歴史〕 『万葉集』巻十・夏雑に「ときじくの花をぞ貫(ぬ)ける卯の花の五月(さつき)を待たば久しかるべみ」、『古今集』夏に「郭公(ほととぎす)われとはなしに卯の花の憂き世の中に啼きわたるらむ 躬恒」、『おくのほそ道』でも「卯の花をかざしに関の晴着かな 曾良」が有名である。
卯の花は、佐佐木信綱作詞の唱歌「夏は来ぬ」でも親しまれている。
〔類題・傍題〕 空木の花 花卯木 垣見草 潮見草 夏雪草 初見草 雪見草 道求草 水晶花 沙羅うつぎ 八重うつぎ 口紅うつぎ 丸葉うつぎ 山うつぎ 卯の花月夜(うのはなづきよ) 卯の花垣(うのはながき)
〔例句〕 ・卯の花も母なき宿ぞすさまじき    芭蕉
  ・卯の花に蘆毛の馬の夜明かな    許六
  ・卯の花や盆に奉捨をのせて出る   漱石
  ・卯の花や馬に物言ふ蓑の人      小波
  ・卯の花や森を出てくる手にさげて   波郷
(根本文子)