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兼題解説 神の留守・白鳥

神の留守(かみのるす)
〔本意・形状〕 陰暦10月には日本中の神々が出雲大社にあつまるという伝説がある。したがって出雲以外の各地では、この間、神が留守になると言われる。これが「神の留守」である。元来、日本の神は農業と結びついているので、春に来て秋に帰るということであったが、いつの間にか一カ月だけ留守をする ことになっていった。
  ・留守の間に荒れたる神の落葉哉      芭蕉
  ・峰の神旅立ちたまふ雲ならむ        水原秋櫻子
  ・願ひ事無くて詣れり神の留守        福島安子
(堀口希望)

白鳥(はくちょう・はくてう)
〔本意・形状〕 カモ科ハクチョウ属の鳥の総称。大型の水鳥で全長110〜150センチ。
嘴と足の黒以外は全身純白で気高い鳥である。しかし、幼鳥は灰色で、童話「みにくいあひるの子」に描かれる通りである。11月になると、コウ、コウと鳴きながら北海道、東北地方に渡ってくる。その第一陣は幼鳥を連れた群れである事が多い。因みに東日本大震災の年も白鳥は変わらず渡ってきて、その姿を見たときは感動した。東北地方ではラムサール条約に指定されている伊豆沼(宮城県)やその周辺の沼に毎年多数越冬している。
〔季題の歴史〕 白鳥の飛来地で有名な新潟県の瓢湖に初めて白鳥が飛来したのは昭和8年と言われる。古い歳時記に「白鳥」と特定したものが少ないのは、昔は、水鳥の中でも白鳥は日本への飛来が滅多に無かったのかもしれない。
しかし、季語、季題とは別に、倭建命(ヤマトタケルノミコト)が死後白鳥になった話はよく知られている。
〔類題・傍題〕 大白鳥、スワン、鵠(くぐい)、黒鳥、白鳥来る。
  ・白鳥といふ一巨花を水に置く    中村草田男
  ・白鳥の水脈ぐいぐいと山を引く   大串章
  ・白鳥の花の身又の日はありや   成田千空
  ・大白鳥流れのままに遠ざかる   佐藤初枝
  ・白鳥に振る合格の輝く手      佐藤ゆたか
(根本文子)