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兼題解説 コスモス・秋祭

コスモス
〔本意・形状〕 メキシコ原産のキク科の一年草。日本には明治時代に渡ってきたが、日本人の好みによく合い、短期間に普及した。栽培も容易で、路傍、河原、空地などに群れて咲く。細い茎の先端に白、淡紅色、深紅色の軽やかな花を付ける。
〔類題・傍題〕 秋桜(あきざくら)
  ・コスモスの花遊びをる虚空かな     高浜虚子
  ・死とはただ居なくなること秋ざくら    不破博
  ・コスモスを立ち泳ぎして一輪車     伊藤杜夫
  ・やさしさはひとことでたる秋桜      鈴木八重子
(堀口希望)

秋祭(あきまつり)
〔本意・形状〕 農村の祭りは特に秋が多い。秋祭は「飽食(あきくい)の祭り」を省略した言葉といわれる。稲の収穫を神に捧げて存分に食べていただき、自分達もともに食べて、満腹する喜びにひたることをその精神とするものである。したがって秋祭は本来新穀の収穫後に行われてきた。
〔季題の歴史〕 新穀を神が召し上がることは、食物にこもる霊威を宿されることであり、神威の力を切り替えるための作法でもあった。だから歴史的には、秋祭は単なる収穫を喜ぶだけの祭りではなかったのである。
しかし、現在ではそうしたことよりも、爽やかな秋空のもと、皆で御輿を担ぎ、祭りそのものを楽しむようになった。
考証 『忘貝』(弘化四年)に「祭」を兼三秋、『季寄新題集』(嘉永元)に「在祭・町祭・甘酒会」を九月として掲出。○『季寄新題集』に、町祭「京師一町に限る秋の小祭なり」、甘酒会「大阪の秋祭をいふものなり」。
〔類題・傍題〕 在祭(ざいまつり)、村祭(むらまつり)、里祭(さとまつり)、浦祭(うらまつり)。
  ・石段のはじめは地べた秋祭り    三橋敏雄
  ・挨拶にしわぶき一つ在祭       宇多喜代子
  ・奥蝦夷のじやんじやら秋の祭足袋 依田明倫
  ・漁夫の手に綿菓子の棒秋祭     西東三鬼
  ・秋祭リボン古風に来たまへり    平畑静塔
(根本文子)