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兼題解説 目刺・風船

目刺(めざし)
〔本意・形状〕 小形の真鰯・片口鰯に塩を振り、5〜6匹ずつ目に竹串または藁を通して1連とし、天日で干したもの。鰓から口を藁で刺し貫いて干し上げたものが頬刺である。軽く焼いて、食事のおかずや酒の肴にする。昔から庶民の食べ物であり、安価だが腸に独特の苦みがあり味わい深い。
  ・殺生の目刺の藁を抜きにけり            川端茅舎
  ・目指し焼くここ東京のド真中             鈴木真砂女
  ・朝市の海の青さの目刺買ふ             松井志津子
  ・行儀よき目刺よ遠き日の生徒            林翔
堀口希望)

風船(ふうせん)
〔本意・形状〕 蝋を引いた五色の紙を貼り合わせた紙風船は、明治の中頃から作り始められた。息を吹き入れてふくらませ、手で突き上げて遊ぶ女の子の遊びである。富山の薬売りが得意先の子供へのお土産にもした。その後ゴム風船が現れ、水素を入れてふくらませ、糸をつけて空中に沢山浮かべる街角の風船売りなども春の景物となった。今では動物や人形など、様々な形の風船が子供達を喜ばせている。
なお、明治23年に上野公園でスペンサーの「風船乗り」が行われ評判になった。 
〔季題の歴史〕 俳句の題として風船が詠まれるようになるのは大正時代からである。
『ホトトギス雑詠全集』(昭和7)に、
「風船を売りて大きな欠伸かな  辰生」(大正11)として所出。
〔類題・傍題〕 風船売り、紙風船、ゴム風船、風船玉
  ・風船赤し子はくだものの匂ひして  成田千空
  ・しぼむとき鳴る風船を見て足りぬ  原子公平
  ・紙風船息吹き入れてかへしやる   西村和子
  ・風船のはやりかしぎて逃げて行く  鈴木花簑
  ・置きどころなくて風船持ち歩く    中村苑子
(根本文子)