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兼題解説 金魚・蛍袋

金魚(きんぎょ)(類題を含む)
〔本意・形状〕 金魚は四季を通じて売買され鑑賞されているが、夏に最も売買・愛玩・鑑賞されるので夏(三夏)の季語とされている。金魚のもともとは鮒で、中国の長江流域において古くから改良されきた。日本には室町末期に輸入され、江戸時代に盛んになった。数十年前までは金魚売が天秤棒に金魚の桶を担って 独特のこわいろで町を流したものである。縁日の夜店の金魚掬いは今も健在であるらしい。
〔類題・傍題〕 和金・琉金・出目金・オランダ獅子頭・金魚田・金魚売・金魚鉢・金魚玉
  ・山町やしはがれ声の金魚売        村上鬼城
  ・踏切を一滴ぬらす金魚売         秋元不死男
  ・子への愛知らず金魚に麩をうかす    桂信子
  ・一途なる金魚掬ひの二重顎        角田登美子
(堀口希望)

蛍袋(ほたるぶくろ)
〔本意・形状〕 キキョウ科の多年草で山野に自生する。6月頃、50センチ〜80セン位 に成長して直立した茎の上部に、釣り鐘形の花が下向きに開く。花の色は白、薄紫色、薄紅色、濃い赤紫色などがあり、花の内側に斑点がある。ふっくらした花の口元がやや窄んでいるせいか、子供がこの花に蛍を入れて遊んだからホタルブクロの名がついたとも言われる。夢のある花である。
〔季題の歴史〕 『毛吹草』(正保二)『鼻紙袋』(延宝五)以下に六月として所出。『忘貝』 (弘化四)に四月とする。『増山の井』(寛文三)『寄垣諸抄大成』(元禄八) には「つりがねの花」として掲出し、六月。○『滑稽雑談』(正徳三)に 「大和本草に曰、{和品}釣鐘草、葉は秋牡丹に似たり。四五月、紫花を開 く。その形、釣鐘のごとし。また、白花、薄紫花のものあり。△このもの和草なり」。
〔類題・傍題〕 釣鐘草(つりがねそう)、なお、釣り鐘状の花の総称として、釣鐘草ということもあり、注意が必要である。
提灯花(ちょうちんばな)、風鈴草(ふうりんそう)。
  ・蛍袋に山野の雨の匂ひかな     細見綾子
  ・見ゆるごと蛍袋に来てかがむ    村越化石
  ・山中のほたるぶくろに隠れんか   小沢實
  ・もごもごと虻ゐるほたるぶくろかな 飯島晴子
  ・見てならぬほたる袋に運転す    稲畑汀子
(根本文子)