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兼題解説 十三夜・栗 |
十三夜(じゅうさんや) |
〔本意・形状〕 |
陰暦9月13日の夜、またはその夜の月。秋も深まっており中秋名月の華やかさはなく、しかも満月には2日早く、少し欠けている。しかし、そこを観賞するところに日本独特の美学があり、詩歌の本意・本情があるといえよう。
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〔季題の歴史〕 |
「金葉和歌集」(平安時代・勅撰和歌集)に「九月十三夜、しづかに月を見るといへることを詠める 澄みのぼる心や空を払ふらむ雲のちりゐぬ秋の夜の月(源俊頼)」
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〔類題・傍題〕 |
後の月・二夜の月・豆名月・栗名月 |
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・木曾の痩せもまだなほらぬに後の月 芭蕉 |
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・皿小鉢洗つて伏せて十三夜 鈴木真砂女 |
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・漢方の百の抽斗十三夜 有馬朗人 |
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・おひかけて行きたき別れ十三夜 本田摂子 |
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・針ほどの音して気づく十三夜 筑紫磐井 |
(堀口希望) |
栗(くり) |
〔本意・形状〕 |
『万葉集』以来うたわれてきた秋の実の代表で、丹波栗が特に有名。
栗の実は外側にとげの密生する毬(いが)の中で育つ。はじめはやわらかく緑色だが、やがて褐色に堅く成熟し、裂けて中の実を落とす。
中の実は二つか三つ、ときに一つ栗もある。自然に落ちる栗を出落栗(でおちぐり)というが、落ちる前に竹竿などで毬をたたき落として実を剝き採ることが多い。野生のものは小さく、山栗、柴栗などと呼ばれるが、甘みが強い。和菓子、洋菓子、栗飯などさまざまに加工され、珍重される。
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〔季題の歴史〕 |
『万葉集』巻九「三栗の那賀に向へる曝井(さらしい)の絶えず通はむそこに妻もが」。『夫木和歌抄』に「山風に峰のささぐりはらはらと庭に落ち散る大原の里」。
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〔類題・傍題〕 |
毬栗(いがぐり)、笑栗(えみぐり)、落栗、出落栗(でおちぐり)、一つ栗、丹波栗、大栗、山栗、柴栗、三度栗(みたびぐり)。 |
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・行く秋や手をひろげたる栗のいが 芭蕉
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・栗の日や椎ももみぢものりこえつ 来山
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・栗一粒秋三界を蔵しけり 寺田寅彦
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・栗食むや若く哀しき背を曲げて 石田波郷 |
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・みなし栗ふめばこゝろに古誹諧 富安風生 |
(根本文子) |
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