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兼題解説 帰り花・毛糸編む

帰り花(かえりばな)
〔本意・形状〕 本来は春に咲く草木の花が、小春日和に誘われて季節外れの花をつけること。主として桜について言うが、躑躅・山吹・蒲公英などについても言う。本咲きと違ってあくまでも狂い咲きなので、花数も少なく淋しい感じがする。和歌・連歌の題にはないが、俳諧では盛んに詠まれた。
〔類題・傍題〕 返り花・帰咲・狂咲・忘咲
  ・汗拭いて米搗く僧や帰り花    蓼太
  ・梨棚や潰ゑむとして返り花    水原秋桜子
  ・職退いていま生き甲斐を帰り花 林一郎
  ・島一つ一村なせり帰り花     有働亨
(堀口希望)

 

毛糸編む(けいとあむ)
〔本意・形状〕 冬支度の一つ、毛糸を棒針やかぎ針で編んで、セ―タ―、マフラ―、手袋などをつくる。誰かのために一心に毛糸を編む様子は、愛情深い女性の姿として句に詠まれるが、最近では編み物をする器用な男性も現れて人気をあつめている。
〔季題の歴史〕 明治になって詠まれるようになった新しい季題で、『ホトトギス雑詠全集』に、毛糸「襟巻を編むべき黒の毛糸かな 虚子」(明治30)が最も早い用例とされる。
〔類題・傍題〕 毛糸、毛糸玉
  ・毛糸編はじまり妻の黙(もだ)はじまる   加藤楸邨
  ・離れて遠き吾子の形に毛糸編む      石田波郷
  ・生涯を決めるに毛糸編みながら      伊藤玉枝
  ・時編むに似たるが愛し毛糸編み      余寧金之助
  ・白指も編棒のうち毛糸編み         鷹羽狩行
(根本文子)