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兼題解説 朝曇・紙魚

朝曇(あさぐもり)
〔本意・形状〕 暑さが特に厳しくなる日は、朝のうち靄がかかって曇ることが多い。これを朝曇という。季節は晩夏である。
「旱の朝曇」という言葉がある。季語として定着したのは近代になってからの由である。
〔類題・傍題〕 特にない。
  ・ふるづけに刻む生姜や朝曇     鈴木真砂女
  ・木の瘤に樹液つやめく朝曇     岡田千代子
  ・枕木に噴く錆色や朝ぐもり      平子公一
  ・河はモネの彩得つつあり朝ぐもり  林翔
(堀口希望)

 

紙魚(しみ)
〔本意・形状〕 紙魚(シミ)は、のり付けした和紙や衣類を食べる最も下等な昆虫である。からだ全体は銀白色の鱗片におおわれて銀色に光っているのでキララムシともいわれる。この鱗片は触れるとすぐとれて褐色の膚になる。幼虫も親と同じ形態をしていて、なめるように食する。古本などに色々の模様の穴をあけるのも、この虫のしわざとされるが、これはシバンムシという昆虫の食害の跡である。紙魚は濡れぎぬをきせられている。
〔類題・傍題〕 蠹魚(しみ)、衣魚(しみ)、きらら、雲母蟲(きららむし)。
  ・逃るなり紙魚の中にも親よ子よ        一茶
  ・紙魚のあとひさしのひの字しの字かな    高浜虚子
  ・月明の書を出て遊ぶ紙魚ひとつ       大野林火
  ・ひもとける金塊集のきらゝかな        山口青邨
  ・紙魚がゐて蔵書ますます増えにけり    山口波津女
(根本文子)