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兼題解説 干柿・露

干柿(ほしがき)
〔本意・形状〕 渋柿の皮をむいて日に干し、渋を抜き甘味を出したもの。
製法により、《吊し柿》縄に通して干したもの、《串柿》竹や木の串に通して干したもの、《枯露柿》吊るして半乾きにし、さらに藁の上に転がし甘さを引き出したものなどがある。季節は晩秋。ちなみに渋を抜く方法としては、皮をむかずに樽に詰めアルコールを吹きかける方法もある(樽柿)。
〔類題・傍題〕 吊し柿・串柿・枯露柿・柿干す・甘干・柿簾
  ・干柿の緞帳山に対しけり        百合山羽公
  ・算盤の玉のごとくに吊し柿       高島征夫
  ・字の名が苗字となりし柿すだれ    能村研三
(堀口希望)

 

露(つゆ)
〔本意・形状〕 露は風のない晴れた夜に、放射冷却によって地面が冷えると、それに接する空気が冷えて、含まれている水蒸気が水滴になるものである。
他の季節にも見られるが、秋に多いので秋の季題となっている。
自然現象だけでなく、涙の露、露の身など、はかなさ、むなしさの思いを表現する用例も多い。芭蕉に「露とくとく試みに浮世すすがばや」 一茶に「露の世は露の世ながらさりながら」などがよく知られている。
〔季題の歴史〕 『万葉集』巻十・秋雑に「白露を取らば消ぬべしいざ子ども露に競ひて萩の遊びせむ」、『古今集』に「啼き渡る雁の涙や落ちつらむ物思ふ 宿の萩の上の露」。『夫木和歌抄』、『連珠合璧集』に「秋」として所出。
〔類題・傍題〕 白露、朝露、夕露、夜露、初露、上露、下露、露の玉、露けし、露葎、芋の露、露の世。
  ・病体の我に露ちる思ひあり        正岡子規
  ・蔓踏んで一山の露動きけり        原石鼎
  ・金剛の露ひとつぶや石の上        川端茅舎
  ・露の中つむじ二つを子が戴く       橋本多佳子
  ・朝露にいちぢくを半分に分け       細見綾子
(根本文子)