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兼題解説 紫陽花・箱庭 |
紫陽花(あじさい) |
〔本意・形状〕 |
鑑賞を目的として庭園などに植える落葉灌木およびその花。T・5メートル前後の茎が叢生し、梅雨入りの頃に咲き始め、梅雨明けの頃に咲き終わる。花の形状については説明を要さないであろう。日本原産の「額の花(額紫陽花)」を母種として観賞用に改良したもののようであるが、最近ではカタカナ名の品種も多い。歳時記では「額の花(額紫陽花)」と別項としている。 |
〔季題の歴史〕 |
「あぢさゐ」の語はすでに万葉集にあり、連歌・俳諧の諸々の歳時記にも載っている。 |
〔類題・傍題〕 |
四葩(よひら)・七変化 |
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・紫陽花や藪を小庭の別座敷 芭蕉 |
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・あぢさゐや仕舞のつかぬ昼の酒 乙二 |
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・紫陽花に秋冷いたる信濃かな 杉田久女 |
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・紫陽花のパリ―に咲けば巴里の色 星野椿 |
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・兄亡くて夕刊が来る濃紫陽花 正木ゆう子 |
(堀口希望) |
箱庭(はこには) |
〔本意・形状〕 |
箱や陶器の鉢に土を入れ、小さい植木や草花を植え、石や苔などをあしらって自然の山水のようにつくり、その趣を鑑賞するもの。
そこに焼き物の亭、人物、灯籠、橋などを配し、名園などを模した。
これを眺めて気ばらしをし、涼味を味わうものである。 |
〔季題の歴史〕 |
盆景がそのはじまりと思われ、中国では千数百年前の文献がある。
わが国では室町時代、茶室に始まったという。初めは盆山ともいい、慶長三年(1596)宮中の女性の日記にこれを贈り物にした文献がある(『図説俳句大歳時記』)。
焼き物の灯籠や人物などは、向島、今戸近辺で多く作られた。
箱庭は江戸時代に大流行し、明治頃までは出来上がった箱庭を担いで売り歩く姿も見られた。 |
〔類題・傍題〕 |
盆山(ぼんやま) |
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・箱庭に鵯越の日のとどく 吉本伊智朗
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・下京や箱庭の丹を濡らす雨 大屋達治
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・箱庭の人に大きな露の玉 松本たかし
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・箱庭の森林鉄道小走りす 平畑静塔 |
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・箱庭の人に古りゆく月日かな 高浜虚子 |
(根本文子) |
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