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兼題解説 竜淵に潜む・水澄む

竜淵に潜む(りゅうふちにひそむ)
〔本意・形状〕 この季語を収録し例句を載せている歳時記は少ない。従ってここでは『角川俳句大歳時記(秋)』の小川軽舟氏の解説を引用する。
「中国後漢時代の字典『説文解字(せつもんかいじ)』に「竜は春分にして天に昇り、秋分にして淵に潜む」とあるのを典拠とする想像上の季語。秋の深く澄んだ静謐な水は、たしかに竜が潜んでいそうな神秘的な印象がある。古来の水神信仰とも重なって、日本人の感覚にも受け入れやすいのである。」
  ・竜淵に潜む男の子の蒙古斑         須佐薫子
  ・竜淵に潜めり火星近づけば         新井秋鴨
  ・竜潜み淵の水位の定まれり         栗城光雄
  ・竜淵に潜む石筍仏かな           小野島淳
(堀口希望)

 

水澄む(みづすむ)
〔本意・形状〕 秋は水が澄んで、底の石までよく見えるようになる。空気も、水も澄み秋は清らかである。「水澄む」は秋の水の類題に近いが、秋の水の本意は清く澄むところにあり、それをあらわした比較的新しい季題である。
〔類題・傍題〕 特になし。
〔季題の歴史〕 明治31年の『新俳句』に「起き起きの硯に秋の水澄みぬ 露石」。
  ・水澄みて四方に関ある甲斐の国    飯田龍太
  ・水澄むやとんばうの影ゆくばかり   星野立子
  ・澄む水のおのれをりをりうちふるひ  皆吉爽雨
  ・さゞなみをたゝみて水の澄みに けり  久保田万太郎
  ・洞窟に湛え忘却の水澄めり      西東三鬼
(根本文子)