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兼題解説 春の雪・辛夷

春の雪(はるのゆき)
〔本意・形状〕 2月から3月にかけて降る雪。散るように降り、溶けやすい。
はかなさもあるが、春を呼ぶ雪としてに明るく詠まれることも多い。 (三春)
〔別名・傍題〕 春雪(しゅんせつ)・淡雪・牡丹雪
〔分類〕 天文
  ・古郷や餅につき込む春の雪    一茶
  ・春の雪波の如くに塀を越ゆ    高野素十
  ・淡雪のつもるつもりや砂の上   久保田万太
  ・子がくれし帽子の中の春の雪   小澤利子
  ・ぼたん雪わたしが空に浮きあがる 安居久美子
  ・制服の黒が濡れをり牡丹雪    森岡正作
(安居正浩)

 

辛夷(こぶし)
〔本意・形状〕 山野に自生するモクレン科の落葉高木。春、葉に先立って木蓮よりやや小振りの白色の6弁花を開く。花数が多いので、木を覆うように見え美しい。蕾が拳に似ているための名ともいわれる。
〔類題〕 日本原産の花木なので、呼び方は地方によっていろいろある。
田打桜…田打ち作業の頃に咲くため。
木筆(こぶし)…蕾の形が筆に似ているため。
こぶしはじかみ…実の種が辛いため。
〔歴史〕 『花火草』(寛永13)・『毛吹草』(正保2)他に仲春3月として所出。
  ・一弁の疵つきひらく辛夷かな      高野素十
  ・辛夷咲く空の固さを揉みほぐし     野田禎男
  ・喪帰りの眼には辛夷の白すぎる    山本かず
  ・花辛夷ギリシャ神話に鳥いくつ     東條未英
(堀口希望)