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兼題解説 滴り・毛虫 |
滴り(したたり) |
〔本意・形状〕 |
夏、崖や岩、こけなどを伝わり、したたりおちる水滴で、いかにも涼しげである。雨が降ったあとのものではなく、地表からにじみ出た水のしたたりをいう。夏の山路でしたたりを見つけると、思わず立ち止まって、暑さも疲れも忘れてしまう。 |
〔季題の歴史〕 |
『新撰袖珍俳句季寄せ』では季題のみ所出。
『簒修歳時記』に、
「滴りは葛の葉裏をうちにけり 月斗」の句を所出。
「滴り」は近代以降の季語で、近世では「滴る山」などと言い、みずみずしさの比喩に用いた。 |
〔類題・傍題〕 |
『図説俳句大歳時記』その他にも見つからない。 |
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・滴りのきらめき消ゆる虚空かな 富安風生
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・滴りに見えゐし風も落ちにけり 中村汀女
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・したゝりの音の夕べとなりにけり 安住敦
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・滴りて石に還りし仏かな 黛執 |
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・山滴る出羽街道と表示して 佐藤初枝 |
(根本文子) |
毛虫(けむし) |
〔本意・形状〕 |
蛾の幼虫で体中毛に覆われているものの総称。毛先に毒があり、触れると皮膚炎を起すものが多い。季節は三夏。 |
〔季題の歴史〕 |
『毛吹草』(正保2年)ほかに6月として所出。他に5月とする俳書、兼三夏とする俳書もある。現代の歳時記はほとんどが三夏とする。 |
〔類題〕 |
特になし。 |
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・毛虫落ちてままごと破る木陰かな 言水
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・葬送を終へてこの世の毛虫焼く 大屋達治
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・するすると糸でのがるる毛虫かな 関とみえ
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・汝毛虫蛾の子か又は蝶の子か 林翔 |
(堀口希望) |
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