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兼題解説 鳥帰る・春雨・独活 |
鳥帰る(とりかえる) |
〔本意・形状〕 |
秋冬に日本に飛来し、冬鳥として越冬した渡り鳥が春に北方の繁殖地に帰ること。大型の鳥についても小鳥についてもいう。「引鶴」「雁帰る」「引鴨」などと個別の鳥についてのいい方もあるが、総称して「鳥帰る」という。季節は仲春。
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〔季題の歴史〕 |
『連歌至宝抄』(天正14年・紹巴著・連歌論書)に「鳥の帰る」として初出。 |
〔類題・傍題〕 |
帰る鳥 引鳥 鳥引く |
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・鳥帰る無辺の光追ひながら 佐藤鬼房
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・戦なき空を選びて鳥帰る 吉川まさ子
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・スコップに匂ふ土くれ鳥帰る 吉岡純子
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・鳥帰るよりも遥かを吾子逝けり 西山禎一 |
(堀口希望) |
春雨(はるさめ) |
〔本意・形状〕 |
『三冊子』に「春雨は小止みなく、いつまでも降り続くやうにする。三月をいふ。二月末よりも用ふるなり。正月、二月はじめを春の雨となり」とある。つまり、正月から二月はじめに降るのを「春の雨」、二月末から三月に降るのを「春雨」と区別している。いづれにしても芽や蕾をふくらませる、希望感のこもる雨である。
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〔季題の歴史〕 |
『至宝抄』(天正13)には「春も大風吹き、大雨降れども、雨も風ももの靜かなるように仕り候事に候」。伝統文芸における「春雨」のとらえ方はこのように「もの静かに」、「小止みなく、降り続く」ように詠むものとされていた。『万葉集』巻10「あしひきの山の間照らす桜花この春雨に散りゆかむかも」、『古今集』に「わがせこが衣春雨降るごとに野辺のみどりぞ色まさりける 貫之 」。『連珠合壁集』(文明8)に初出、「春雨とアラバ、しくしく。木の芽。衣。野山のみどり。梅の花笠。むなしき空」。 |
〔類題・傍題〕 |
春の雨 春霖 暖雨 |
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・春雨や蓬をのばす草の道 芭蕉
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・はるさめや暮れなんとしてけふもあり 蕪村
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・春雨やジョットの壁画色褪せたり 高村光太郎
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・春霖や土蔵を出でしときにほふ 黒田杏子 |
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・春の雨つくづくと子に育てられ 井田美千代 |
(根本文子) |
独活(うど) |
〔本意・形状〕 |
ウコギ科の多年草。高さは2メートルくらいで、夏から秋に白い花を咲かせる。山野にも自生するが、古くから野菜として栽培もされている。三月頃に出る若芽は香りや歯触りがよく、酢の物や和え物にする。「山独活」は香りが一層強い。
大きくなると食べられないので、役に立たないものを「うどの大木」などと言う。(晩春) |
〔場所〕 |
山野など |
〔季題の歴史〕 |
『花火草』(寛永13年)に、二月として初出。 |
〔別名・傍題〕 |
山独活・芽独活・独活掘る |
〔分類〕 |
植物 |
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・雪間より薄紫の芽独活かな 松尾芭蕉
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・山うどのにほひ身にしみ病去る 高村光太郎
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・山独活がいつぽん笊にあるけしき 中原道夫
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・独活浸す水夕空につながりて 村越化石 |
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・独活食べてゐるなかなかの美髯かな 能村登四郎 |
(安居正浩) |
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