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兼題解説 |
巴里祭(ぱりさい) |
〔本意・形状〕 |
七月十四日、フランスの革命記念日の日本での呼び方。ルネクレール監督の映画の邦訳名「巴里祭」に由来する。
この日フランス各地は大変にぎわうが、日本でもかつてフランスに住んだ文化人や、旅行した人々がフランスへの愛着と郷愁のやり場として集まり歓を尽くす。
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〔季題の歴史〕 |
一七八九年七月十四日、パリの民衆はバスチーユ牢獄を占拠開放してフランス革命の端緒となったが、これを記念してフランスでは国際日となっている。
この日はバスチーユ広場を中心に、国全体で夜通し飲み歌い踊る。日本では、ルネクレール監督の映画「カトルズ・ジュイエ」(七月十四日祭)を上映するとき「巴里祭」と訳し、これが日本人に好まれて使われるようになった。 |
〔別名・傍題〕 |
パリ祭 パリー祭 |
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・若き日の父にもありしパリ祭 景山筍吉
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・濡れて来し少女が匂ふ巴里祭 能村登四郎
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・パリー祭ぬれ色つばめ羽ずくろふ 土居伸哉
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・巴里祭モデルと画家の夫婦老い 中村伸郎 |
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・鉛のごとき東京の屋根巴里祭 高島茂 |
(根本文子) |
凌霄花(のうぜんか) |
〔本意・形状〕 |
ノウゼンカズラ科。落葉するつる性の木。付着根で木や壁や垣根にまといついて伸びる。十メートル近くになることもある。黄赤色の大きな花を下向きに咲かせる。花弁は五裂し唇形をしている。最近は住宅地でもよく見られる。(晩夏)
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〔別名・傍題〕 |
凌霄・凌霄の花・のうぜんかずら |
〔分類〕 |
植物 |
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・塵とりに凌霄の花と塵すこし 高野素十
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・凌霄や午後は日の渦風の渦 古賀まり子
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・のうぜんの花活けて赤ければきみが来る 滝井孝作
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・夕焼や杉の梢の凌霄花 村上鬼城 |
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・凌霄は妻恋ふ真昼のシャンデリヤ 中村草田男 |
(安居正浩) |
昼寝(ひるね) |
〔本意・形状〕 |
昼間に短時間眠ることである。昼寝は夏に限ったことではないが、蒸し暑く疲れやすい夏を過ごすために特に夏に盛んであり、もって夏の季語とされている。 |
〔場所〕 |
室内・縁側・作業場・木陰・テントの中など制約はない。 |
〔季題の歴史〕 |
『俳諧季寄大全』(享和2)に4月として、『四季名寄』(天保7)・『増補改正俳諧歳時記栞草』(嘉永4)に兼三夏として出ている。 |
〔別名・傍題〕 |
午睡・三尺寝・昼寝覚・昼寝起・昼寝人
なお、三尺寝は職人などがごく短時間作業現場で昼寝をすることである。 |
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・蝿多き市に隠るる昼寝かな 炭 太祇
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・昼寝より覚めてこの世の声を出す 鷹羽 狩行
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・羽化のなき身をながながと大昼寝 行貝 祐二郎
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・船長の陸にしあらば三尺寝 牧野 桂一 |
(堀口希望) |
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