ホーム
兼題解説

野分(のわき)
〔本意・形状〕

草木をなびかせて吹き荒れる秋の暴風。季節は仲秋。気象用語でいう熱帯低気圧から台風までを包含する。台風がタイフーンの訳語として最近定着した のに対し、野分は平安時代以来の歴史と文学的背景を有する。

〔場所〕 特に限定されない。
〔季題の歴史〕 『枕草子』に「野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ」とあり、『千載和歌集』に「野分する秋のけしきを見る時は心なき人あらじとぞ思ふ」がある。『誹諧御傘』(松永貞徳)は「秋なり。七八月に吹く大風なり。暴風とも書く」と解説している。
〔別名・傍題〕 野わけ・野分だつ・野分波・野分雲・野分跡・野分晴
  ・芭蕉野分して盥に雨を聞く夜かな      松尾芭蕉
  ・鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分かな       与謝蕪村
  ・大いなるものが過ぎ行く野分かな      高濱虚子
  ・長靴に腰埋め野分の老教師         能村登四郎
  ・連山の一気に近し野分あと          秋吉かずみ
(堀口希望)

 

鳥頭(とりかぶと)
〔本意・形状〕 中国原産のキンポウゲ科の多年草。薬用、切り花用として栽培される。
有毒植物。草丈一メートル程、茎頂に濃紫色の美しい花をつける。花の形が、舞楽や能の冠り物「鳥兜」に似ているのでこの名がある。同じ仲間に野生種のヤマトリカブト等30種ほどが秋の山野を彩るがすべて有毒とされる。
〔季題の歴史〕 『改正月令博物筌』に、鳥頭「葉、よもぎに似て厚し。花の色、紫にして、形は鳥兜に似たり。よりて名ずく。薬物に烏頭といふは、根なり」。
〔別名・傍題〕 鳥兜、兜花(かぶとばな)、草烏頭(くさうづ)
  ・今生は病む生なりき鳥頭        石田波郷
  ・十歩入り憩ひし山の鳥かぶと     高野素十
  ・鳥兜花尽くさぬに我等去る       橋本多佳子
  ・色濃ゆし氷河の跡の鳥かぶと     山下智子
  ・とりかぶと紫紺に月を遠ざくる     長谷川かな女
(根本文子)

 

敬老の日(けいろうのひ)
〔本意・形状〕 国民の祝日の一つで、老人を敬う日。老人の福祉や敬老の意識を高める行事が行われる。元々9月15日だったが、現在は9月の第三月曜日。(仲秋)
〔季題の歴史〕 昭和26年に「としよりの日」として始まり、昭和41年「敬老の日」となった。
〔別名・傍題〕 年寄りの日・老人の日・敬老日
〔分類〕 行事
  ・敬老日とは煮小豆をことことと      及川 貞
  ・老人の日喪服作らむと妻が言へり   草間時彦
  ・いやおうもなくとしよりの日がくるぞ   西野文代 
  ・敬老日男ばかりが老いにけり      山口和生
  ・敬老の日ぞ朝酒を許されよ        林  翔
(安居正浩)