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兼題解説

炎昼(えんちゅう
〔本意・形状〕

真夏の灼けつくように暑い昼。時刻でいえば正午から3時ごろまでか。
意味としては「日盛り」と大差がないが「炎」という字の激しさと生々しさ、漢音による語感の強さが、近・現代的な感覚を詠むのに好まれて使われている。

〔場所〕 特に限定されない。
〔季題の歴史〕 山口誓子が昭和13年刊行の句集名に『炎昼』を使って以来広まったといわれる。
〔別名・傍題〕 夏の昼 夏真昼
  ・炎昼へ製氷の角をどり出る       秋元 不死男
  ・炎昼に出づ盗掘の墓穴より      種山 知子
  ・炎昼の追ひかけてくるムンクの目   野見山ひふみ
  ・炎昼や石の館の絵画展         富永 晃一
(堀口希望)

 

心太(ところてん)
〔本意・形状〕 干した天草を煮て溶かし、それを濾過して型に入れ固めたもの。水で冷やしたものを心太突きで突き出し、醤油・酢・蜜などをかけて食べる。冷たくあっさりした口当たりで、夏に好まれた。(三夏)
〔季題の歴史〕 奈良時代の正倉院文書や平安時代の『新撰字鏡』や『和名抄』に「こころふと」の文字が見える。室町時代の『七十一番職人歌合』には、心太売りの姿を描き、「我ながら及ばぬ恋と知りながら思ひ寄りける心ふとさよ」の歌を添えている。「ところてん」と呼ばれるのは近世以降と見られる。
〔別名・傍題〕 心天(ところてん)・こころぶと・心太突き
〔分類〕 生活
  ・清滝の水汲ませてやところてん   芭蕉
  ・ところてん逆しまに銀河三千尺   蕪村
  ・ところてん煙のごとく沈みをり     日野草城
  ・死ぬほどといふはどれほど心太   高倉和子
  ・心太はづみで承知してしまふ     楠原幹子
(安居正浩)

 

優曇華(うどんげ)
〔本意・形状〕 昆虫の草蜉蝣(くさかげろう)の卵。2センチほどの糸状の先に白い球のついたものが壁や木の枝に群生し、花の咲いているように見える。この卵からかえった幼虫はアリマキを食べる益虫で、親はアリマキのいる近くに産卵する。優曇華は他に、仏教的背景のある花(歴史参照)でもあるので、この花が咲くと吉兆、あるいは凶事の前兆とする俗信がある。
〔季題の歴史〕 「優曇」は梵語の音訳で、優曇華は仏教では三千年に一度花ひらく植物とされる。この花が咲くときは如来がこの世に出現すると伝えられる。『源氏物語』(若紫)に、「優曇の花まち得たるここちして」。
  ・わが息にうどんげもつれそめにけり     阿波野青畝
  ・優曇華や寂と組まれし父祖の梁       能村登四郎
  ・優曇華に夕日さしゐる京都御所       飯田龍太
  ・優曇華やきのふの如き熱の中        石田波郷
  ・優曇華や父死なば手紙もう書けず      森澄雄
(根本文子)