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兼題解説 |
早春(そうしゅん) |
〔本意・形状〕 |
立春後、二月いっぱいぐらいを言う。暦の上では春であるが、一年中でもっとも寒い時ともいえる。まだ雪も降り、氷も張るが、春の予感もある。季感としては(春浅し)に近いがこれよりもまだ寒さが強い。
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〔季題の歴史〕 |
『明治俳諧五万句』に所出。〈早春の花に大雪来たりけり 大須賀乙字〉 (明39) |
〔別名・傍題〕 |
春早し 春さき |
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・早春や道の左右に潮満ちて 石田波郷
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・早春の山笹にある日の粗さ 細見綾子
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・早春の鶴の背にある光の輪 富沢赤黄男
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・楽器函ほど早春の水車小屋 鷹羽狩行 |
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・早春の喪より帰りて時あます 青柳志解樹 |
(根本文子) |
涅槃(ねはん) |
〔本意・形状〕 |
陰暦2月15日(ちなみに新暦でいえば今年は3月22日)に釈迦が入滅したことをいう。当日行われる釈迦の遺徳追善の法要を涅槃会といい、平安時代以降諸寺で涅槃図を掲げ読経し法会を執り行っている。本来は仲春の季語であり、歳時記も仲春の季語とするものが多いが、新暦2月5日に法要を営む寺も多いためか、『角川俳句大歳時記―春』のように初春の季語とするものもある。 |
〔場所〕 |
諸寺 |
〔季題の歴史〕 |
『至宝抄』(紹巴・天正14年)に「仏の別れ」として初出。『俳諧初学抄』(徳 元・寛永18年)に「涅槃」が出ている。 |
〔別名・傍題〕 |
お涅槃・涅槃会・仏の別れ・涅槃図・涅槃絵・涅槃像・涅槃仏・寝釈迦 |
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・神垣や思ひもかけず涅槃像 松尾芭蕉
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・諸鳥の地に嘆かへり涅槃像 水原秋桜子
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・おん顔の三十路人なる寝釈迦かな 中村草田男
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・涅槃図の巻き皺三百年の皺 平畑那木 |
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・涅槃図の裾に赤子の這うて来し 加治幸福 |
(堀口希望) |
農具市(のうぐいち) |
〔本意・形状〕 |
農閑期(1月〜4月)に、1年の農作業の準備をするために立つ市。寺社の祭礼・縁日などに合わせ開かれる。鍬・鎌・鋤・剪定鋏・鋸・斧・鉈などの金物や種物、その他の農業用具、生活用具が並ぶ。世田谷のボロ市は1570年代の楽市に始まる農具市であった。(春) |
〔場所〕 |
寺や神社の境内 |
〔分類〕 |
生活 |
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・鍬一丁買ふに駆引き農具市 三枝青雲
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・田植笠被つて売れり農具市 伊藤無門
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・わが捨てし村に戻りぬ農具市 佐藤夫雨子
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・にはとりが叱られてゐる農具市 小笠原和男 |
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・釣銭に木の葉のまじる農具市 鈴木良戈 |
(安居正浩) |
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