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兼題解説

茴香の花 (ういきょうのはな)
〔本意・形状〕

セリ科の多年草。6・7月頃に咲く。枝先に黄色く小さい五弁の花を群がりつけるさまは、傘を開いたようである。

花は夏の季語で、実は秋の季語。楕円形の実は香りが強く、薬用や香料に用いられる。
〔場所〕 畑・庭
〔季題の歴史〕 『和名類聚鈔』にクレノオモ(茴香の古名)という名が見える。
〔別名〕 呉の母(くれのおも)、茴香子、魂香花  
〔分類〕 植物
  ・茴香の夕月青し百花園            川端茅舎
  ・茴香のありとしもなく咲きにけり       増田手古奈
  ・茴香の花も時には鬱なる夜         中嶋秀子
  ・茴香の花のほとりに旅疲れ         加藤三七子
  ・茴香の花とて寄れば匂ひ立つ        塚田 文
(安居正浩)

 

白靴 (しろぐつ)
〔本意・形状〕 夏はく白い靴を言う。革、ズック、ナイロンメッシュなど素材はさまざまである。
夏の涼感をそそる軽快で清々しい靴が愛用される。
〔季題の歴史〕 「俳諧雑誌」大正七年七月号に「白靴や撒水したる公園道・堀井紫紺潮」を所出。
  ・九十九里浜に白靴提げて立つ         西東三鬼
  ・白靴を踏まれしほどの一些事か        安住敦
  ・文学の果ての白靴並べ干す          飯田龍太
  ・くらがりの白靴いつまでも歩く          岸田稚魚
  ・白靴まで少女全容鏡に満つ           大串章
(根本文子)

 

牛冷す (うしひやす)
〔本意・形状〕

夏の夕方に農耕用の牛を水辺に連れて行き、汗を洗い流し、体を洗い、疲れを取り除くこと。季節は晩夏。最近ではほとんど見かけない風景になってしまった。

〔場所〕 湖・池・沼・川・海の岸辺
〔季題の歴史〕 「武玉川」(1750〜1776年慶紀逸および2世紀逸が編した俳諧高点附句集)に「藻の花や動かずにゐる冷し馬」が見えるが、ほかは調べられなかった。
〔別名〕 牛(馬)洗う・馬冷す・冷し牛(馬)
  ・牛浸けて川幅なせり鶴見川         水原秋桜子
  ・冷されて牛の貫禄静かなり         秋元不死男
  ・洗ひ牛葛真つ青に昏れはじむ        石田 波郷
  ・青年の日焼鉄壁牛冷す            森  澄雄
  ・絶海の死火山の裾牛冷す          野見山朱鳥
(堀口希望)