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兼題解説 |
旧正月 (きゅうしょうがつ) |
〔本意・形状〕 |
太陽暦に改暦後の太陰暦(旧暦)による正月の呼び方。
明治5年12月9日付の詔書により太陰暦を廃して太陽暦を採用したが(経過措置として明治5年12月3日を明治6年1月1日とした)、その後も民間では太陰暦で正月などの行事を行うしきたりが長く続いた。
とくに農家では月齢により作業手順を決める事が多く、また漁師は潮の干満により出漁のタイミングを決める事が多いので、それぞれ太陰暦を用い、その影響で商家にも太陰暦によるしきたりが長い間残った。
現在でも僅かながら旧暦により正月を祝うところがあると思われる。 |
〔季題の歴史〕 |
当然のことながら、明治6年以後の季語である。 |
〔別名〕 |
旧正。横浜の中華街などでは「春節」として祝っている。 |
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・旧正の草の庵の女客 高浜虚子
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・馬の眼に旧正月の泪かな 佐川広治
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・旧正の餅菓子を切る赤き糸 明隅礼子
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・旧正の卵の殻が潮に乗る 只野柯舟 |
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・春節や空を鳩翔け地には獅子 岩崎照子 |
(堀口希望) |
高菜 (たかな) |
〔本意・形状〕 |
芥菜(からしな)の類であるが芥菜より葉が大きく、大株になり辛みが少ない。
西日本で多く栽培され、おもに漬け物にされる。
芥菜(からしな)は中央アジア原産、日本でも古くから香辛料として利用されてきた。
春、茎が伸びて、小さな黄色のつぼみをつける頃に収穫し、漬け物などにする。
苦み、甘み、かおりが好まれる。種子を粉末にしたものが芥子である。 |
〔場所〕 |
畑 |
〔季題の歴史〕 |
『初学抄』(寛永18)に「からし」として所出。
『滑稽雑談』(正徳3)に「この花また茹として春喰らう」。 |
〔別名〕 |
芥菜(からしな) 芥子菜 ながらし 青芥(あをからし) 菜芥 辛菜 |
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・辛菜も淋しき花の咲きにけり 一茶
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・からし菜が濃緑に夜や明けぬらし 前田普羅
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・からし菜を買うや福銭のこし置き 長谷川かな女
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(根本文子) |
流氷 (りゅうひょう) |
〔本意・形状〕 |
寒帯地方の海面が結氷して生じた海氷が割れて、風または海流によって運ばれ、海を漂流するもの。(広辞苑)
日本ではオホーツク海沿岸に2月半ばから3月に多く見られる。 |
〔場所〕 |
北海道オホーツク海沿岸 |
〔季題の歴史〕 |
「氷ながるる」として「至宝抄」(天正13年)初出。「流氷」は、山口誓子の俳句「流氷や宗谷の門波(となみ)荒れやまず」以後とされる。 |
〔別名〕 |
流氷期・氷流るる・流氷盤 |
〔分類〕 |
地理 |
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・流氷の張りつめてくる空の飢ゑ 石原 八束
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・流氷やわが旅の間も父母老ゆる 坂巻純子
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・流氷を見るだぶだぶの借着なり 藤原照子
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(安居正浩) |
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