ホーム
兼題解説

焼米 (やきごめ)
〔本意・形状〕 新米を籾のまま炒り、臼で搗いて籾殻を取り去ったもの。新米は実がやわらかで、平たくなる。甘くて香ばしく、農村の子供のおやつにもなった。
〔場所〕 農家
〔季題の歴史〕 「焼米」の文字は、正倉院文書や『和名抄』にも見え、歴史は古い。近世には大量生産され、京・江戸に献上したり、焼米売りが町家に売り歩いたりした。
〔別名〕 やいごめ・ひらごめ・とりのくち・いりごめ
  ・焼米や家に伝はる会津盆        樗良
  ・焼米や子のない家も御一口       一茶
  ・やき米や仏の膝にあまるまで      蕪村
(安居 正浩)

 

林檎 (りんご)
〔本意・形状〕 いまの林檎は中央アジア原産だが、西欧で品種改良されたものが明治初年に輸入されて現在に至る。江戸時代までの林檎、つまり
「世の花の色に染めたるりんごかな 太祇」などに出るものは中国原産。洋種の林檎が定着して以後、ほとんど姿を見なくなった。秋から冬にかけて品種もきわめて多い。
〔場所〕 温帯から低温の地に適し、日本では長野・東北・北海道が名産地。
〔季題の歴史〕 近世期から例句があるが、季題としての定着は洋種が輸入された近代以降のことである。
  ・噛みかけの林檎を馬に抛りやる    佐藤万里子
  ・喪服着て林檎むく手をぬらしをり    桜庭 梵子
  ・どこからも津軽富士見えりんご晴れ  福田 花仙
(谷地海紅)

 

風除 (かざよけ)
〔本意・形状〕 北西の寒風を避けるため、初冬雪の来る前に、家の北側や西に板・丸太棒・葦・芒・竹・稲藁などで塀のように作ったもの。 蔬菜畑などにも作る。近年は鉄骨などで恒久的施設として作っ た、取り外し可能な物も現れている。
〔場所〕 主に北陸・東北・北海道の農村・漁村に見られる。ただし蔬菜畑などでの風除は暖地でも見られる。
〔季題の歴史〕 冬構・雪囲などの情趣の延長で、近代に生まれた季題。近世に 見あたらない理由は、当時の季題の歴史が文化の中心地である都市を舞台に描かれていたからか。
〔別名〕 風垣(かざがき・かぜがき)・風囲(かざがこい・かぜがこい)
  ・風除をしてどびろくの隠しあり    岸 風三郎
  ・風除やくぐりにさがるおもり石    村上 鬼城
  ・風除に浪のしぶける魚見窓     景山みどり
(堀口希望)