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兼題解説

硯洗 (すずりあらひ)
〔本意・形状〕 手習(習字や詩歌の学習)の上達を祈って、硯を洗うなど机の周りを綺麗にする七夕前夜の行事。
「今日(七月六日)硯、机を洗ひ清め、芋の葉の露を取り、梶の葉に七夕に手向けの詩歌を書き供するなり」(『改正月令博物筌』)という神事は北野天満宮(京都)に始まるか。
〔場所〕 家庭や寺子屋・神社など。
〔季題の歴史〕 『通俗志』(享保元)に「机洗」を併出。京都の北野天満宮では、硯に梶の葉を添えて神前に供える御手洗(みたらし)祭が行われる。
〔別名〕 机洗ふ。御手洗(みたらし)祭り。
  ・硯洗ふ墨あをあをと流れけり       橋本多佳子
  ・今年より吾子の硯のありて洗ふ     能村登四郎
  ・筆硯多摩の流れに洗ひけり       吉田 書房
(根本文子)

 

不知火 (しらぬひ)
〔本意・形状〕 蜃気楼現象の一つ。有明海と八代海の沖に、陰暦8月1日前後の午前二時ごろ、大小無数の燈が明滅して、ゆらめき動く現象をいう。
〔場所〕 有明海・八代海(不知火海)。
〔季題の歴史〕 『嘉永新題集』(嘉永元)。景行天皇が筑紫巡幸の時、暗夜に何とも知れぬ怪しい火が海上にあらわれたという故事による。
〔別名〕 龍燈。
  ・不知火に酔う余の盞を擲たん      日野 草城
  ・炭車押す不知火燃ゆる海の底      荒金 久平
  ・不知火に客することも鉱山仁義     小林貞一朗
(安居 正浩)

夜学 (やがく)
〔本意・形状〕 夜学校あるいは大学・高校・専門学校などの夜間部。また、夜学校や夜間部で勉強すること。夜学は四季を問わないが、勉学の好季として秋の季語とする。勤労学生・苦学生のイメージがある。
〔季題の歴史〕 幕末・明治以後か。二三子の影坊長き夜学かな(島田五空・明治40『裘』)
  ・ややありて遠き夜学の灯も消えぬ   谷野 予志
  ・住込の二階にかへる夜学かな     長倉 閑山
  ・今の彼夜学教師の頃の彼        生駒てるまろ
(堀口 希望)