■白山連句会第十六回興行
2014/05/06-17:11 No.[902]
白山連句会第十六回興行
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山房の海紅 2014/05/09-23:30 No.[903]
わがままを聞いていただいて、無迅と海紅による両吟(二人旅)をさせていただきます。目的は連句に遊ぶ人を増やすことにあります。自己表現というよりも、他者(前句)の言葉に寄り添って、徳(よりよく生きようとする心、品性)を育む喜びを体験したいと思います。等身大の習作(エチュード)とお考えいただき、温かく見守っていただければ幸いです。
無迅さんに当季で発句をお願いしたところ、次のような三句をいただきました。
1,式台の禰宜の黒沓新樹光
2,往年のペン蛸痒し柿若葉
3,箱庭のやうな町行く初夏の旅
発句を詠む際の障害はありません。しかし祢宜や旅という重厚な世界は七句目(初折ウラ)以降の展開で遊ぶことにして、無迅さんの自画像のような2を立句にいただきます。ワープロが主流で、ぺん蛸などあまりできない時代になりましたが、時々痒くなって、昔できた蛸を懐かしくさすってみたりする。中七で表現は完結して(切れて)、作者の目の先に萌葱色の柿若葉が見えている。そのやわらかな色とペン蛸の記憶はそれとなく重なるように思います。そんな作者の姿を読み取りました。若葉で夏季。
その発句全体の姿に、何かを添えられる脇句(七七、短句、下句)をプレゼントしたい。そんな気持ちで「窓開け放ち薫風と書く」とい句を案じました。発句を手紙を書く人とみたのです。脇句は韻字留め(体言留め)がよいとされますが、発句が体言で留まっていますから、あえて気にしないことにします。
発句 往年のペン蛸痒し柿若葉 無迅(夏)
脇 窓開け放ち薫風と書く 海紅(夏)
第三
これで、無迅さんに第三の長句をいただくことにしましょう。第三は発句と脇で作られた世界を一転させる転じ(変化)の場とされてきました。発句・脇の世界では昼間に手紙を書いている人物が描かれました。場所は室内でしょう。とすれば、人間を出さない叙景句(景気)がよいことになります。また夏の二句がでましたので、古式に従えば雑の句(季のない句)がよいことになります。叙景で季のない句、ちょとむずかしいかも知れませんが、よろしくお願いします。
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無迅 2014/05/10-22:42 No.[904]
早々と先生に開いて戴いた第16回興業、間髪を入れず付けようとしたのですが、根が呻吟タイプの無迅、すっかり遅れてしまいました。未だ不得要領の点がありますが、先生の捌きにすがりたいと思います。
遅くなりましたが、2句ほど。
川の辺の芥流れに乗りかねて
火の山へ流れし雲のほの消えて
よろしくお願いします。
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山房の海紅 2014/05/11-11:11 No.[905]
【前句全体を引き受ける】
1,川の辺の芥流れに乗りかねて
2,火の山へ流れし雲のほの消えて
「叙景で季のない句」という条件を踏まえてくださり、この二案をいただきました。でもその前に「窓開け放ち薫風と書く」の全体を踏まえてくださいとお願いすべきでした。窓を開けて風を感じた作中人物は何に「薫風」と書いたのか。可能性は、
A、万年筆で便箋に書いた(手紙)
B、毛筆で和紙に書いた(書道)
C、日記帳に書いた
などと想像すれば、一応前句全体を引き受けた(解釈した)ということになります。
これから無花果句会に出かけますので、続きは帰宅後にします。
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山房の海紅 2014/05/12-10:18 No.[906]
【付き過ぎ】
しかし、ABCの解釈を素直に、A「便箋にインクのにじみ広がりて」、B「墨汁の乾くを待たず壁に下げ」、C「日記書き終えて箪笥に鍵かけて」など付句案を提出すると、「付き過ぎだね」などと言われてしまうのではないでしょうか。
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山房の海紅 2014/05/12-11:14 No.[907]
【転じ=第三幕を描く】
では「付き過ぎ」を避けるためにどうするか。第三幕を描けばよいように思います。
A案を例に説明してみます。第一幕は「窓開け放ち薫風と書く」、第二幕は「便箋にインクのにじみ広がりて」と仮定して、時間的にも空間的にもその先(第三幕)を想像する。例えば「置き去りの郵便自転車夕映えて」。上等な句とは言えないけれど打越の「ペン蛸」や前句の「薫風と書く」の時空から離れつつ、赤い郵便自転車で淡くつながるのではないでしょうか。前句を第一幕として、第三幕を考えると「付き過ぎ」を逃れられるという経験をお話ししてみました。理屈の通りには進まないし、理屈で進んではおもしろくもないのですが、御参考までに記してみました。
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山房の海紅 2014/05/12-11:29 No.[908]
発句 往年のペン蛸痒し柿若葉 無迅(夏)
脇 窓開け放ち薫風と書く 海紅(夏)
第三 置き去りの郵便自転車夕映えて 同(雑)
4 川辺に沿ひて続く細道 無迅(雑)
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山房の海紅 2014/05/12-11:40 No.[909]
【エチュード】
無迅さんとの親しさに甘えて、四句めまででっち上げてしまいました。連句を警戒している読者を意識した習作と前置きした通りのことで、今後もこんなおしゃべりの多い珍道中になると思います。御了承ください。脇→第三と同じ作者が付けることは違法ではなく、芭蕉と越人の両吟「雁がねも」歌仙などもその例です。特に両吟(に限らず偶数の人)で遊ぶ場合は、長句ばかり、短句ばかりと付句が偏らないように、展開に応じて遊べばよいと思います。
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山房の海紅 2014/05/12-11:56 No.[910]
【第三の訂正と四句目】
勝手ながら、第三の「夕映えて」は「赤錆びて」と修正させて。理由は5句目は月の指定席(定座)で、無迅さんに月の句(秋)を詠んでもらいます。そうなると、二つ手前に同じ天象である夕日の景(夕映え)があると、変化に乏しいと叱られてしまうからです。まあ、こんなふうに間違いも露呈するのが学習になると考えて、大目にみてください。四句目は第三の候補にいただいた無迅さんの長句を短句に仕立て直しました。前句の自転車のある場所を定めたつもりです。
発句 往年のペン蛸痒し柿若葉 無迅(夏)
脇 窓開け放ち薫風と書く 海紅(夏)
第三 置き去りの郵便自転車赤錆びて 同(雑)
4 川辺に沿ひて続く細道 無迅(雑)
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山房の海紅 2014/05/12-12:05 No.[911]
【五句目は月の定座】
無迅さん、いろいろ勝手をお許しいただき、よろしくお付き合いください。五句目に月の句(長句)をお願いします。4「川辺に沿ひて続く細道」はいかにも月が昇りそうな景色と思います。雑を二句前置きしましたので、人間が登場してもしなくても、つまりどのような月でも大丈夫です。
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無迅 2014/05/13-23:34 No.[912]
遅くなりました。
五句目候補です。
月の駅竹馬の友のお出迎へ
月天心永の邂逅影二つ
よろしくお願いします。
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研究室の海紅 2014/05/14-13:41 No.[913]
1,月の駅竹馬の友のお出迎へ
2,月天心永の邂逅影二つ
二案拝受。1の「月の駅」がイメージできません。2の「永の邂逅」が読めず、中七下五が難解。お考えの情景をお教えください。
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無迅 2014/05/15-00:13 No.[914]
打越の郵便自転車から発句・脇で認めたのは旧友への便りと考えました。
前句は旧友に会いにゆく自宅最寄駅への細道との解釈です。
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研究室の海紅 2014/05/15-12:23 No.[915]
【俳諧の文学性―子規の基礎知識の欠如―】
私はかつて、子規の俳諧に対する基礎的知識の欠如を指摘して、彼のこの連俳非文学論を批判したことがあった(註一)。そこで私が述べた主張は今も変わってはいない。これはやや重要な問題だと思うので、まず俳諧の文学性に対する私の考えを述べ、それを基にして、子規の説を再び批判してみたい。私の考えでは、俳諧の文学性は継ぎの四点にあると思う。
(一) 一句一句独自のおもしろさ
(二) 前句と付句との間に生まれる付味(つけあじ)のおもしろさ
(三) 三句の転じのおもしろさ
(四) 一巻全体の構成とその変化・調和のおもしろさ
(東明雅著『連句入門』中公新書P12〜P13)
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研究室の海紅 2014/05/15-12:53 No.[916]
【明雅先生の教え】
前項に明雅先生の名著の一節を抜き出しました。その理由は「月の駅」「月天心」の二案について、無迅さんの思案をうかがったところ、5の月の句を案じる際に、発句・脇・第三あたりにも気を遣っているらしいことがわかったからです。こんなに気を遣って句を案ずるのは大変だったにちがいありません。
誤解されることを承知で、やや乱暴に申します。付句を案ずる際は明雅先生の箇条書きの(一)と(二)に注意を払えばよいでしょう。
誤解されることを承知で申します。打越以前の句など(とりあえずは)無視して、
(一)一句として独立していればよい
(二)前句と結んで一首の和歌になればよい
こんなふうに考えて遊んでください。これから講義です。余はあらためて。
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研究室の海紅 2014/05/16-15:32 No.[917]
発句 往年のペン蛸痒し柿若葉 無迅(夏)
脇 窓開け放ち薫風と書く 海紅(夏)
第三 置き去りの郵便自転車赤錆びて 同(雑)
4 川辺に沿ひて続く細道 無迅(雑)
5 月天心駅に竹馬の友を待つ 同(秋・月の定座)
6 大学祭に虫売りも出る 海紅(秋)
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山房の海紅 2014/05/18-14:30 No.[918]
【二案を合体して一案に】
ハタ目には海紅がまことに勝手なまねをしているように見えることと思います。でもお相手は気安い無迅さんですので、この勝手を続けさせていただき、まだ連句未体験の方にも連句の面白さが届くように、饒舌を重ねます。
さて、無迅さんの二案の1「月の駅」、2「永の邂逅」が抽象的でしたので、二句を合体、駅で幼なじみの来訪を待つ人を出しました。月は中天にあることから、この再会がわくわくしたものであることを感じ取ってもらえるでしょうか。
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山房の海紅 2014/05/18-14:46 No.[919]
【場所を地方からやや都会へ】
4,5句を合わせて読むと、舞台はどことなく郊外、田園という地方色。そう考えて、6句目は大学などのある都市へ(田舎→都会)と移したつもり。そううまく転じていないかもしれないがお許しを。
大学祭にはいろんな出店が並ぶけれど、その一つとして「虫売り」を出してみたわけ。鈴虫、松虫なんてものを売り商売は江戸時代からあったし、4,5にある地方色をそれとなく残すことに成功している?、いない?それは読者の御判断にお任せします。前句の二人が久方ぶりに母校を訪問したのかも。そんなふうに鑑賞していただいてもかまいません。
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山房の海紅 2014/05/18-15:37 No.[920]
【大学祭に虫売りも出る…と掛けまして】
穏やかな展開を求められる第1頁(初折オモテ)が終わって、次は第2頁(初折ウラ)へ入ります。秋の句は三句以上続けてくれという古式に(一応)従い、今度は三つ目の秋の句なので、晩秋の「柳散る」を材料にします。「大学祭に虫売りも出る」と掛けまして(「問題として取り上げまして」という意)、「古町に残る黒塀柳散る」と解きました。ちょと新潟みたいになりましたが、いかがでしょうか。実は無迅さんから連絡で、そっち方面に旅行中だとか。それで古町なんて行ってみました。普通名詞とお考えください。
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山房の海紅 2014/05/18-15:57 No.[921]
【柳―妄想と余情】
前項後ろから2行目「行って」は「言って」の間違いでした。行きたいけれど、海紅は新潟の古町には行っていませんので御安心ください。
ところで、昨日は俳文学会の東京例会で、江東区の芭蕉記念館で勉強してきました。第1部は綿抜豊昭さんの〈「旧派」俳人活動の評価―芭蕉200回忌を中心に〉という御発表。『諸国翁塚記』についてボクが考えていることと重なるお話で、示唆に富んだものでした。
第2部は不卜編『続の原』の発句輪講です。そこに「柳」(春)の句が五、六句並んでいる中に著名な句らしいのですが、「おもひ出て物なつかしき柳かな 才丸」というむずかしい句がありました。意味不明なときは妄想が働きます。ボクはなぜか『伊勢物語』を踏む「若竹や橋本の遊女ありやなし 蕪村」を思い出して色っぽい句だと思ってしまいました。
ちなみに妄想と余韻(余情)は似て非なるものでしょうから、ボクの妄想は決して信じないでください。呵々
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山房の海紅 2014/05/18-16:08 No.[922]
【恋の呼び出し】
発句 往年のペン蛸痒し柿若葉 無迅(夏)
脇 窓開け放ち薫風と書く 海紅(夏)
第三 置き去りの郵便自転車赤錆びて 同(雑)
4 川辺に沿ひて続く細道 無迅(雑)
5 月天心駅に竹馬の友を待つ 同(秋・月の定座)
6 大学祭に虫売りも出る 海紅(秋)
7 古町に残る黒塀柳散る 海紅(秋)
黒塀と柳、「何となく色っぽいだろう」と誘導したつもりです。旅から戻った無迅さんには恋の句を考えてもらいましょう。「古町に残る黒塀柳散る」と掛けて、さてどんな恋が登場するか、お帰りを待つことにいたします。
なお「古町に残る黒塀柳散る」のような、何となく恋の匂いがする句を「恋の呼び出し」というのですが、もちろん今覚える必要はありません。ボクの知識もいい加減ですからネ。
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井上石動 2014/05/19-15:30 No.[923]
待望の「連句」が再開されています。
私がこの会に入れて貰おうと思ったのも、連句を学びたいがゆえ。
愉しく、勉強させていただきます。
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はなだ莉由 2014/05/19-20:06 No.[924]
あ、ここに書き込んで良かったのですね。
私も連句志向です。展開を楽しみに拝見させていただいています。
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伊藤無迅 2014/05/20-12:22 No.[925]
暢気な旅からやっと戻りました。
越路の旅は残念乍ら柳降る古町ではなく、桐の花咲く十日町(旧魚沼郡)の当間(あてま)という高原でした。
熟年呑み友との恒例の旅でしたが、何処へ行っても溢れる翁・媼の集団、恋の句材には事欠きません。
それにしても、
・ 一句として独立していればよい。
・ 前句と結んで一首の和歌になればよい。
というアドバイスは、初心の心を軽くします。
早いもので(読者にとっては何とモタモタでしょうか)、展開は初折ウラへ、先生の見事な「恋の呼び出し」に導かれて二句ほど。
7 古町に残る黒塀柳散る 海紅(秋)
手を振る人の赤いスニーカー 無迅(恋)
肩触れ合うはノースリーブの君 無迅(恋)
よろしくお願いします。
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研究室の海紅 2014/05/20-17:31 No.[926]
【はっきりと恋にする】
お帰りなさいませ。さて恋の句案拝見しました。
1,手を振る人の赤いスニーカー
2,肩触れ合うはノースリーブの君
2案を修正して採用します。修正する理由は、前句を恋の呼び出しと判断したら、次は明らかな恋句にするという慣習があるから。そこで、前句の柳散る寒げな秋季に結びつけて面白いのは「ノースリーブ」、この寒いのに何でノースリーブなのよ、というところが面白いと考えます。それをはっきりと恋にするために、やや過激に參ります。粋な黒塀に恋人同士を出すことにしましょう。
2,ノースリーブでキスも上手で 無迅(雑・恋)
こんな修正を加えたからと言って、海紅の品位を疑わないでください。はっきりと恋にするとはこのような工夫であると思います。
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出勤前の海紅 2014/05/22-08:13 No.[927]
【恋は一句で終えない(捨てない、やめない)】
恋は人生の大切な題目、また連句は展開(転じ)のおもしろさを追求する詩歌なので、次も恋にします。前句の若々しさから、時間的に大いに転じて、下記のようなものにします。
発句 往年のペン蛸痒し柿若葉 無迅(夏)
脇 窓開け放ち薫風と書く 海紅(夏)
第三 置き去りの郵便自転車赤錆びて 同(雑)
4 川辺に沿ひて続く細道 無迅(雑)
5 月天心駅に竹馬の友を待つ 同(秋・月の定座)
6 大学祭に虫売りも出る 海紅(秋)
7 古町に残る黒塀柳散る 海紅(秋)
8 ノースリーブでキスも上手で 無迅(雑・恋)
9 肌の色は移りにけりと孫を抱く 海紅(雑・恋)
花の色はうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに(小町・古今・春)
バレバレでしょうが、この古歌をパクリました。季を出さないように、老いへと転じましたが、おもしろがっていただけるでしょうか。
さて次の10句目は無迅さんに短句をお願いします。その際考えるべきことは、恋をもう一句出してもよいということ、ただし13句目(初ウラ7句目)、14句目(初ウラ8句目)あたりが、月の句の出所(でどころ)と言われてきたこと、すでに5句目に秋の月が出たので、今度は他季の月がよさそうだというふうに考えます。そこで、他季の月が出やすいように配慮して、10、11、12句までは雑(無季)でいくのも知恵であると言われています。打越から離れるために、季感のない自然詠が望まれます。
恋の句を続けるか、恋を離れた雑の句を考えるか、それは無迅さんにお任せ。どうぞよろしく。
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伊藤無迅 2014/05/22-23:19 No.[928]
「はっきりと恋にする」
「恋は一句で捨てない」、大変勉強になりました。
特に先生の「はっきりと恋にする」は度肝を抜かれました。「ノースリーブ」で意表を突いたつもりでしたがとてもとても・・・・参考になりました。
さて10句目ですが「季感のない自然詠」にしたいと思います、が、9句目への付け感が結構難しいです。
いまいちかと思いますが、孫と遊ぶ部屋から見た光景を2句ほど。
肌の色は移りにけりと孫を抱く 海紅(雑・恋)
生垣越しに神名備の山 無迅(雑)
縁に転がるでんでん太鼓 無迅(雑)
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山房の海紅 2014/05/23-13:07 No.[929]
【神祇釈教恋無常】
出雲びいきの無迅さんらしい句が出ましたね。神々のいます「神名備の山」の句をいただきましょう。孫を抱く老人が庭に立って神名備の山を眺めている姿でしょう。
連句一巻の中には、神祇(天地の神々)・釈教(仏道の世界)・恋(男女間の情愛)・無常(死去の現実)を必ず詠みこむという指導があります。転じ(変化)の妙を創造するための工夫ですが、万物流転の人生の諸相を感動的に描きたいというPoetryの欲求と言ったほうがよい。但し序章である最初のページ(初ウラの六句まで)は遠慮することになっています。この両吟の場合、ここで恋と神祇が出たことになりますね。次を担当するボクは無迅さんの投げかけた神祇(神奈備)を活かすような連想をしなければいけませんね。こんな句ではどうでしょうか。
縄文の土器らしきもの出土 海紅
「神名備」から古代の痕跡を出してみました。長句短句入れ替えるために、次の短句を海紅が案じます。名利を求めず考古学に生涯を費した研究者をヒントに次のような句を付けさせてください。
一つの著書もなくて終へたる
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山房の海紅 2014/05/23-13:16 No.[930]
【御自由に付けてみてください】
発句 往年のペン蛸痒し柿若葉 無迅(夏)
脇 窓開け放ち薫風と書く 海紅(夏)
第三 置き去りの郵便自転車赤錆びて 同(雑)
4 川辺に沿ひて続く細道 迅(雑)
5 月天心駅に竹馬の友を待つ 同(秋・月の定座)
6 大学祭に虫売りも出る 紅(秋)
7 古町に残る黒塀柳散る 紅(秋)
8 ノースリーブでキスも上手で 迅(雑・恋)
9 肌の色は移りにけりと孫を抱く 紅(雑・恋)
10 生垣越しに神名備の山 迅(雑)
11 縄文の土器らしきもの出土 紅(雑)
12 一つの著書もなくて終へたる 同(雑)
無迅さん、次句(長句)はお好きなように。
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伊藤無迅 2014/05/24-00:39 No.[931]
12 一つの著書もなくて終へたる 同(雑)
13 師の背中冬三日月の影で追ふ 迅(冬・月の定座)
寒月に立つ師の背中大きかり 迅(冬・月の定座)
名利を求めず、一書も残さない老考古学者を慕う弟子たちは少ない。
本物の心は、得てして饒舌な口元ではなく寡黙な背中に現れる。
ここは神祇の後でもあり老学者(人)の生き方に焦点を当て、
一句目は、老学者を慕い常に行動を共にする若き研究者を多少詩的詠いましたが、抽象的か?
二句目は、それを具象化しました。
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eiko yachimoto 2014/05/24-09:46 No.[932]
先生、
土器はかわらけ
と
よむのでしょうか?
575病患者より。
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山房の海紅 2014/05/24-09:47 No.[933]
【物語を戻さない、先へ、先へ】
A)師の背中冬三日月の影で追ふ
B)寒月に立つ師の背中大きかり
いずれも格調高き付句案と拝察。但し前句の「終へたる」は「生涯の終えた(逝去)」「研究生活を終えた」という意味で使いましたので、「師の背中」と来ると、まだ生きているようで、時間的に戻ってしまう危険性があります(ボクの前句が未熟ということかもしれませんが)。転じましょう、という連句の約束には、時間を戻さないという意味が込められているのです。
そこで、恩師はもうこの世にいないという設定で、句中の人物を後継の若き研究者とさせてください。これで無常の句もできたことになります。ボクは研究者の住居の一端をあしらい、月を見ている部屋を出してみます。
13 先生の在まする如く冬の月 迅(冬・月の出所)
14 炉箒焦げて炉辺に転がる 紅(冬)
15 (雑の長句) 迅
16 (雑の短句) 紅
17 (花の定座) 迅
18 (春の短句) 紅
以下、花を出すやすくするために、こんな感じで挑戦しましょうか。無迅さんよろしくお願いします。
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山房の海紅 2014/05/24-09:54 No.[934]
【かわらけ(かはらけ)】
eiko様
お察しの通りです。仮名で「かはらけ」としようか迷いましたが…… 575教信者より
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伊藤無迅 2014/05/24-23:25 No.[935]
「連句は前進あるのみ」の大原則を忘れ、つい師の幻を深追いしすぎ、大変失礼いたしました。
15句は、師名残の庵を出て、若き研究者の日常にもどります。
研究室に向かう通勤路の光景、
14 炉箒焦げて炉辺に転がる 紅(冬)
15 おはやうとスケボー少年かすめ行く 迅(雑・長)
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山房の海紅 2014/05/25-09:35 No.[936]
13 先生の在まする如く冬の月 迅(冬・月の出所)
14 炉箒焦げて炉辺に転がる 紅(冬)
15 おはやうとスケボー少年かすめ行く 迅(雑)
16 遠きチャイムに続く朝練 紅(雑)
無迅さん、花の定座です。花の句は理屈を言えばむずかしいのですが、「桜」をイメージしつつも「桜」の代わりに「花」という語を使うとでもお考えください。
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伊藤無迅 2014/05/26-00:47 No.[937]
花の定座を戴きまして有難うございます。
とにかく華やかさが問われる定座かと思います。
つい数年前、ブルマ(古い?)をはいて朝練で一心にラケットを振っていた教え子も早や年頃、今日は将来有望な研究者に晴れて輿入れの日です。
16 遠きチャイムに続く朝練 紅(雑)
17 嫁入りの箪笥全開花の雲 迅(花の定座)
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山房の海紅 2014/05/26-01:53 No.[938]
「往年の」歌仙(両吟)
発句 往年のペン蛸痒し柿若葉 無迅(夏)
脇 窓開け放ち薫風と書く 海紅(夏)
第三 置き去りの郵便自転車赤錆びて 同(雑)
4 川辺に沿ひて続く細道 迅(雑)
5 月天心駅に竹馬の友を待つ 同(秋・月の定座)
6 大学祭に虫売りも出る 紅(秋)
7 古町に残る黒塀柳散る 紅(秋)
8 ノースリーブでキスも上手で 迅(雑・恋)
9 肌の色は移りにけりと孫を抱く 紅(雑・恋)
10 生垣越しに神名備の山 迅(雑)
11 縄文の土器らしきもの出土 紅(雑)
12 一つの著書もなくて終へたる 同(雑)
13 先生の在まする如く冬の月 迅(冬・月の出所)
14 炉箒焦げて炉辺に転がる 紅(冬)
15 おはやうとスケボー少年かすめ行く 迅(雑)
16 遠きチャイムに続く朝練 紅(雑)
17 出払つて箪笥全開花の雲 迅(花の定座)
18 非戦を誓ふ国につばくら 紅(春)
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山房の海紅 2014/05/26-02:24 No.[939]
【半歌仙成立】
無迅さん、おかげさまで半歌仙成立。花の定座の「嫁入り」は恋の句になるので、勝手ながら修正。それに「非戦」を出して、時事(昨今の社会情勢)を添えてみました。名残の折に入り、長短入れ替えて、19句目はボクが付けてみます。田園風景が足りない気がして、畑仕事の一端を出してみました。これで春三句ですから、20には雑の短句をお願いします。農業に携わる人の様子をいただければ一番よいかと思います。あと半分、どうぞよろしく。
17 出払つて箪笥全開花の雲 迅(花の定座)
18 非戦を誓ふ国につばくら 紅(春)
19 リヤカーに堆肥むんむん春の風 紅(春)
20 (雑の短句) 迅
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伊藤無迅 2014/05/26-12:11 No.[940]
確かに「嫁入り」は恋の句、経験不足が露呈してしまいました。
19 リヤカーに堆肥むんむん春の風 紅(春)
20 鍬を片手に薬缶水飲む 迅(雑)
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山房の海紅 2014/05/26-15:29 No.[941]
【今後の季題配置】
半歌仙を終えて、どうにか要領を得たと判断し、以下に一応の季題と作者を配置します。展開によって変更もあり得ます。
◆名残の表
19(折立):春=海紅
20(二句目):雑=無迅
21(三句目):雑=海紅
22(四句目):雑=海紅
23(五句目):夏=無迅
24(六句目):夏=無迅
25(七句目):雑=海紅
26(八句目):恋=海紅
27(九句目):恋=無迅
28(十句目):雑=無迅
29(月の定座):秋の月=海紅
30(折端):秋=無迅
◆名残の裏
31(折立):秋=無迅
32(二句目):雑=海紅
33(三句目):雑=海紅
34(四句目):雑=無迅
35(花の定座):花=無迅
36(挙句):春=海紅
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山房の海紅 2014/05/26-15:38 No.[942]
【描かれた世界、描きたい世界】
今まで描かれた世界を大まかにあげますと、文人・級友・古代史・学者・青少年・農業・山や川でしょうか。
今後はこれ以外の世界で積極的に遊びたい。具体的には海・老人・商業・工業、釈教(仏道の世界)、無常(哀傷)などもありたい。女性を描くことが、無迅・海紅共に苦手のようにも見えます。大胆に、また細心に参りましょう。
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山房の海紅 2014/05/26-16:15 No.[943]
19 リヤカーに堆肥むんむん春の風 紅(春)
20 鍬を片手に薬缶水飲む 迅(雑)
21 而して鹿鳴館の竣工す 紅(雑)
22 三味諦めて目指すダンサー 紅(雑)
21は前句の「鍬を」持つ人を、明治の鹿鳴館の建設現場で働く人と読み替えて、都会へと転じました。22は当時芸妓からダンサーへと転身する人が多く出た、という話を工夫したつもりですが…。無迅さん、夏の句をお願いします。
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伊藤無迅 2014/05/27-00:29 No.[944]
22 三味諦めて目指すダンサー 紅(雑)
23 川床の談笑一人僧もゐて 迅(夏)
24 炎天続く佐渡の相川 迅(夏)
都会に転じて二句、ダンサーは社交場の花、昨日は鹿鳴館、今日は大川の川床へ、そこで知り合った僧との縁で佐渡の相川へ。
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山房の海紅 2014/05/27-07:44 No.[945]
22+23の世界。ダンサーを目指す女が今日は仲間と床涼みを楽しんでいる。そこに不似合いな僧も一人交っている。こんなところでしょうか。
23+24の世界。「そこで知り合った僧との縁で佐渡の相川へ」と解すと、作中は「僧」と「ダンサー」ということになる。しかし「ダンサー」は打越の人物なので、24には関わらせてはいけない。
そこで、22とは切り離して、僧との縁で、勝手ながら「夏草繁き金山の墓地」とさせてください。はっきりと釈教の世界を描くことにいたします。
22 三味諦めて目指すダンサー 紅(雑)
23 川床の談笑一人僧もゐて 迅(夏)
24 夏草繁き金山の墓地 迅(夏)
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研究室の海紅 2014/05/27-18:08 No.[946]
22 三味諦めて目指すダンサー 紅(雑)
23 川床の談笑一人僧もゐて 迅(夏)
24 夏草繁き金山の墓地 迅(夏)
25 筒井筒井筒と謡ひ泣き崩れ 紅(雑)
26 古き枕にもの思ひゐる 紅(恋)
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山房の海紅 2014/05/28-00:20 No.[948]
【古典の恋に遊ぶ】
25の海紅句は前句の墓地から連想して、伊勢物語に材を得た謡曲「井筒」を踏まえ、帰らぬ夫を待ち続ける女を出してみました。雑の句ですが、井筒は幼いころの淡い恋の舞台ですから、すでに25で恋の思いが表現されてしまったかもしれません。26は女が独り寝をかこつ恋の場面のつもりです。無迅さんにはどうぞ恋をもう一句案じてください。一応の季題と作者を配置をしながら、ここで配置にずれが生じましたが、連句は知的連想ゲームですから、流れで恋が三句になっても、一向にかまいません。無迅さん、25の人物は女(よき妻)ですから、27の恋人に恵まれた熟年男性などで案じてください。気楽にお願いします。
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山房の海紅 2014/05/28-08:11 No.[949]
チョト入力が前後して、無迅さんの句案が【古典の恋に遊ぶ】の前に入ってしまった。さてどうしたものか、少し時間を下さい。
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伊藤無迅 2014/05/28-11:41 No.[950]
自分の番だと思い書き込みを急いでしまいました。
No948を噛みしめて再考したいと思います。
→no947は消します。
といっても、今から出かけますので、書き込みは夜になるかと思います。
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伊藤無迅 2014/05/28-16:31 No.[951]
26 古き枕にもの思ひゐる 紅(恋)
27 懐の妹の手紙も読み解けて 迅(恋)
28 松原越しにたらい舟見ゆ 迅(雑)
伊勢物語の「井筒」を踏まえ、幼いころの淡い恋の世界を充分理解し次の展開を考え付けてゆくという、ベースとなる共有世界が、ここにきてやっと見えてきたように思います。古典はそういうものを得やすいテクストなんですね。28は未だ佐渡ですが、海の世界に転じてみました。
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研究室の海紅 2014/05/29-12:55 No.[952]
26 古き枕にもの思ひゐる 紅(恋)
27 懐の妹の手紙も読み解けて 迅(恋)
28 松原越しにたらい舟見ゆ 迅(雑)
29 国境の無きがごとくに昼の月 紅(月の定座)
佐渡は「たらい舟」で有名ですが、佐渡だけでもないので、かまわないと思います。ボクの月の句は領有権に関する昨今の中国・越南・韓国・日本のいざこざを悲しんでつけました。仲麻呂が中国でみた月は杜甫・李白・王維がみたのと同じ月でありました。
もう折端ですね。無迅さん秋の短句をよろしく。これから三年四年の俳諧ゼミに出かけます。
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伊藤無迅 2014/05/29-22:30 No.[953]
29 国境の無きがごとくに昼の月 紅(月の定座)
30 やんまは高く悠久を飛ぶ 迅(秋)
月は空間を、やんまは時間を超えて在るがままを映す。
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山房の海紅 2014/05/30-07:47 No.[954]
29 国境の無きがごとくに昼の月 紅(月の定座)
30 やんまは高く悠久を飛ぶ 迅(秋)
29→30への展開は、ここまで最上の世界と感心。無迅さんをむりやり両吟の相手に引っ張り出してよかったとこの段階でそう思っています。引き続き、31折立に秋の長句をお願いします。転じという条件から、「国境」「外國」関連に関わらないものがありがたい。秋は今まで「虫」「散る柳」「トンボ」しか出ていません。時節(気象)・田園(果実や農業)など、新しい秋の世界を描いていただければ幸いです。
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eiko yachimoto 2014/05/30-10:44 No.[955]
初学の頃(=今か)575と77を取り違えて出すと
たけくらべと叱責されました。それほどの事?と感じないでもなかったのですが、連句は音楽でもあると分かってきて,納得の境地に。先生、お返事ありがとうございました。
両吟歌仙の世界にしらべが流れ始めたeiko より。
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伊藤無迅 2014/05/30-19:29 No.[956]
29 国境の無きがごとくに昼の月 紅(月の定座)
30 やんまは高く悠久を飛ぶ 迅(秋)
31 日の落ちて桐の実鳴りし背戸の山 迅(秋)
折立は私の番ということを失念しておりました。
その上、過分なる言葉を頂戴し幾分高揚気味です。
31では、場面をぐっと身近な秋に引き寄せてみました。
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山房の海紅 2014/05/31-07:55 No.[957]
【満尾近し】
30 やんまは高く悠久を飛ぶ 迅(秋)
31 日の落ちて桐の実鳴りし背戸の山 迅(秋)
32 旅の記憶を絵手紙にせん 紅(雑)
33 コンビニの珈琲今日はLサイズ 紅(雑)
32は31を旅の景色とみました。33はしばらくぶりの都会、絵手紙を書く人の手に珈琲があるとでも御理解ください。無迅さんに雑の短句を添えていただき、花の句へと進んでいただきます。満尾近し。
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伊藤無迅 2014/05/31-17:13 No.[958]
33 コンビニの珈琲今日はLサイズ 紅(雑)
34 スカイツリーを指で弾いて 迅(雑)
35 朝桜夢の続きをゆつくりと 迅(花)
35揚句に近い花の定座、配慮が要るかと思いましたが、気楽に詠まさせてもらいました。
何とか、先生の導きでここまで来ました。満尾まで巻くのは生涯で初めてのこと、感慨無量です。正直前半は五里霧中、付けの感覚らしきものを得てきたのは終盤に入ってからでした。
長い道中を有難うございました。
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山房の海紅 2014/05/31-19:02 No.[959]
33 コンビニの珈琲今日はLサイズ 紅(雑)
34 スカイツリーが正面に見え 迅(雑)
35 花の宿夢の続きをゆつくりと 迅(花の定座)
36 小便をして二度寝する春 紅(春・挙句)
スミマセン、34の「指で弾いて」を解釈できませんでしたので、勝手に直しました。また花の定座は基本的に「桜」の語を出さず、「花」という語で賞美の心を表現します。よって、ここでも傲慢に35朝桜→花の宿とさせていただきます。無迅さんありがとうございました。満尾萬歳。
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はなだ莉由 2014/05/31-20:25 No.[960]
海紅さま、無迅様、両吟歌仙、満尾おめでとうございます。
いい勉強をさせていただきました。有り難うございます。
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山房の海紅 2014/05/31-21:10 No.[961]
習作「往年の」両吟歌仙 海紅捌き
往年のペン蛸痒し柿若葉 無迅(夏)
窓開け放ち薫風と書く 海紅(夏)
置き去りの郵便自転車赤錆びて 同(雑)
川辺に沿ひて続く細道 迅(雑)
月天心駅に竹馬の友を待つ 同(秋・月の定座)
大学祭に虫売りも出る 紅(秋)
初ウ
古町に残る黒塀散る柳 紅(秋)
ノースリーブでキスも上手で 迅(雑・恋)
肌の色は移りにけりと孫を抱く 紅(雑・恋)
生垣越しに神名備の山 迅(雑)
縄文の土器らしきもの出土 紅(雑)
一つの著書もなくて終へたる 同(雑)
先生の在ます如くに冬の月 迅(冬・月の出所)
炉箒焦げて炉辺に転がる 紅(冬)
おはやうとスケボー少年かすめ行く 迅(雑)
遠きチャイムに続く朝練 紅(雑)
出払つて箪笥全開花の雲 迅(花の定座)
非戦を誓ふ国のつばくら 紅(春)
名オ
リヤカーに堆肥むんむん春の風 紅(春)
鍬を片手に薬缶水飲む 迅(雑)
而して鹿鳴館の竣工す 紅(雑)
三味諦めて目指すダンサー 紅(雑)
川床の談笑一人僧もゐて 迅(夏)
夏草繁き金山の墓地 迅(夏)
筒井筒井筒と謡ひ泣き崩れ 紅(雑)
古き枕にもの思ひゐる 紅(恋)
懐の妹の手紙を読み解きて 迅(恋)
松原越しにたらひ舟見ゆ 迅(雑)
昼の月上げて国境隠れなし 紅(月の定座)
やんまは高く悠久を飛ぶ 迅(秋)
名ウ
日の落ちて桐の実鳴りし背戸の山 迅(秋)
旅の記憶を絵手紙にせん 紅(雑)
コンビニの珈琲今日はLサイズ 紅(雑)
スカイツリーが正面に見え 迅(雑)
花の宿夢の続きをゆつくりと 迅(花の定座)
小便をして二度寝する春 紅(春・挙句)
平成26年5月 9日起首
平成26年5月31日満尾
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山房の海紅 2014/05/31-21:22 No.[962]
【御批判、御感想をお願いします】
1,明雅先生の説く「4,一巻全体の構成とその変化・調和のおもしろさ」を求めて、付句数句を推敲しました。
2,無迅さんにはお付き合いいただきありがとうございました。
3,海紅の捌きの知識はこの程度です。
4,皆さんから御感想、御批判をいただくのが何よりの勉強です。どうぞよろしく。
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堀口希望 2014/06/01-12:34 No.[963]
両吟歌仙めでたく満尾、お疲れ様でした。先生にはお忙しい中、観客席にも分かる声でご指導いただき、連句とはどういうものかおぼろげながら理解できたように思います。無迅さんにはすごく勉強になったのではないでしょうか。これから紙に落として再読するつもりです。
ところで早速の疑問ですが(愚問?)教えてください。
初ウラの「出払つて箪笥全開花の雲」と名残オモテの「リヤカーに堆肥むんむん春の風」は二句一章のように思われるのですが、(発句でない)付句でも二句一章はありうるのでしょうか。よろしくお願いいたします。
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文緒 2014/06/01-16:02 No.[964]
満尾おめでとうございます。
歌仙とは面白いものだと、拝見しました。長い道中まことにお疲れ様でした。
ひとつ、わからぬ点があります。
29句目の変更にはどんな理由が −−−。
現在の領有権問題に関連させてということであれば、あとの句「・・・国境隠れなし」は、非常に明快でふさわしいと存じますし、悲嘆の余情もつたわってきます。
ご説明だけお願いします。
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千年 2014/06/01-16:22 No.[965]
満尾おめでとうございます。かるみは付合にありですね。改めて認識した「俳諧の文学性」、「転じることは時間を戻さないこと」、「高揚感」。勉強させていただきました。
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eiko yachimoto 2014/06/01-17:37 No.[966]
満尾おめでとうございます。
特選3句の渡り(in eiko's happy 妄想):
生け垣越しに神名備の山
縄文の土器らしきもの出土
ひとつの著書もなくて終へたる
(リアリティある小説的世界〜時間軸)
ーーー
リヤカーに堆肥むんむん温き風
鍬を片手に薬缶水飲む
而して鹿鳴館の竣工す
(秀逸な転じ、詩の特権)
ーーー
松原越しにたらい舟見ゆ
国境のなきがごとくに昼の月
やんまは高く悠久を飛ぶ
(ウエハスのような白い月の統べる空間の妙)
with a deep bow,
谷地元瑛子
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井上石動 2014/06/01-20:20 No.[967]
満尾、おめでとうございます。
今日はどうかな、今日はどうかな・・と、ウキウキする日々を過ごしました。
「皆さんから御感想、御批判をいただくのが何よりの勉強です。」の捌様呼びかけに応じて、まったくの「初心」かつ「ものの本に書いてあること」を盲信して、以下の感想を。
ガチガチの式目遵守派としての疑問
@留め:11&13 12&14 16&18 17&19 22&24 31&33
A場:11&13 13&15 18&20 28&30 29&31
B美
酒・獣類・旨い食い物・病態が欲しかった。
*******
私の好きな付句
9(肌の色は) 22(三味諦めて) 24(夏草繁き) 25(筒井筒) 36(小便をして)
今回の巻は、抒情・叙景主体の、おっとり ほのぼの おちついた巻だと思うし、心休まる気がした。
が、逆に、そこが少し「物足りない」気がしていたところ、挙句で、ドカ〜ン。
挙句でのこの句・・・に、大拍手を送りました。
素晴らしい「オチ」でした。
以上、わけのわからん初心が、多々のべました。
是非、一日も早く、新連句を巻いてください。
私の日々を、豊かにし戴くために・・・。
その日を、待ってます。 俳諧万歳!
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山房の海紅 2014/06/02-12:29 No.[968]
【総論:付合の学習で大切なこと】
御指摘、御感想に感謝します。御礼の意味で、現状における海紅のとりまとめをして、連句挑戦へのハードルを下げておきたいと思います。今後の課題は、論文を読む会などの折にでも、お話し合いを重ねて、なんとか連句をおもしろくしたいと思います。どうぞよろしく。
1.〔前句に感動すること〕
その意味を理解しがたいときは率直に尋ねる。そして、場合によっては修正してでも自分の句にする。
2.〔前句は嘱目に等しい〕
前句を自分の句にするとは、嘱目(自分の目にふれたもの)と見なすことである。
3.〔満尾が一番大切な目標である〕
習作は稽古(Practice)であるから、よほどの障害がない限りは挙句までゆくことである。表現・付味(つけあじ)・転じ・変化と調和に振り回されて、原点、つまり他者(前句・嘱目)を通して自分の心が見えてくる愉しみを失いたくない。
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山房の海紅 2014/06/02-12:32 No.[969]
【各論:諸兄姉の指摘にふれて】
4.〔両吟の欠点〕
石動氏評にみるごとく、二人では発想が固定化して、素材に偏りがみえ、大胆な展開に欠けている点は否めない。習作を言い訳にして今後の課題にしましょう。
5.〔「切れ」と「切れ字」―「切れ」其1〕
発句に詩情や品位(格調・丈)をもたらす工夫のひとつ。二章体(句中で切れる)、または一章体(句末で切れる)にするはたらきを持つ。古くは特定の切れ字を定めて説明したが(八雲御抄・白髪集)、蕉門では、完結するという機能が果たされていれば文字にこだわる必要はないとし、「切字に用ふる時は四十八字皆切字也。用ひざる時は一時も切字なし」(去来抄)とされた。ちなみに、詩情や品位は発句に限られた要件ではないので、海紅は付句(平句)にも切れはあってよいと考えている。
6.〔二章体―「切れ」其2〕
長句の形式のひとつ。独立したAとBを付け合わせて品位を創出することから、格調を求められる発句・第三に有効であるという。ただし、海紅は平句においても格調を必要とする展開はあると考えている。
7.〔二句一章(体)―「切れ」其3〕
二章体の構造を、付味(前句と付句との味わい)に応用した語。ただし、付味とは基本的に二句一章の構造をもつゆえ、海紅はこの語を用いないようにしている。
8.〔希望氏発言の示唆するもの―平句について―〕
5,6,7は希望氏の御指摘を考えるためのノートである。氏の指摘は「17出払つて箪笥全開/花の雲」「19リヤカーに堆肥むんむん/春の風」の二句だが、おなじ視点で見直すと「5月天心/駅に竹馬の友を待つ」「7古町に残る黒塀/散る柳(柳散る)」も同様の問題をはらむだろう。現段階では、19の場合は内容に発句の格はないので二章体に見えても気にしなくてよい気がする。しかし、この問題は「平句」とは何かを考えることから始めるべき今後の課題かもしれない。
9.〔留め(文末)と打越〕
石動氏指摘の「打越に障る文末表現」は難題。打越は韻律という効果も捨てがたいので、今後の諸兄姉との研鑽の過程で答えを出したい。
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山房の海紅 2014/06/02-12:32 No.[970]
続きです。
10.〔自他場と打越〕
石動氏の指摘に自他場と打越の問題がある。北枝考案とされるこの転じ方の技法は、これまで解釈によって区別が微妙なケースに遭遇することが多かったので、特に習作と銘打った今回は全く考慮しなかった。ただし、課題としては貴重なものゆえ、以下に俳諧ゼミで配布している資料の一部を11として転載し、参考に供する。
11.〔自他場の定義〕
◆人情自=作中人物自身の言動や心情を述べた句。
◆人情他=作中人物の言動や心情を他者からみて述べた句。
◆自他半=人情の句で、自と他を含む句。
◆場=人情のない句(景色や世相など)。
◆会釈=前句の作中人物の衣類・持ち物・周辺の道具などをほどよくあしらう句。人情を含み、自とも他ともとれるもの。前句が自の場合→自の会釈、前句が他の場合→他の会釈。まれに場の会釈もあり。
12.〔最後の推敲について〕
文緒氏が「29国境の無きがごとくに昼の月」→「29昼の月上げて国境隠れなし」への推敲理由についてお尋ねがあった。第一理由は「13先生の」という月の句で、同じ比況の助動詞「如し」を使っていたことです。初案も捨てがたくいとおしかったのですが、同じ語法ですので変更しました。句意は、どちらにしても国境の存在を悲しんだものですので、御指摘の通りに解釈いただいてかまいません。
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eiko yachimoto 2014/06/02-18:46 No.[971]
英語で巻くときに、海外の詩人達に発句と平句の違いを以下のように説明しています:
*発句はそれ自体で詩として屹立している句,省略の力をフルに活かす切れがある句が多い。垂直な力をもつので立句とも呼ぶ。
*平句は前句との行間が切れの役割を
果たすことで有機的な波動がhorizontal(水平移動)にうまれるのです、ですので平句自体には切れを設けないで下さいネ。
*前句をとことん鑑賞し,前句の世界に入り込んで、そこから付けを考えると,その二つの行間が生きた切れとなり、そこに連句ノ命がやどります。
海紅先生、このいつもの説明をどう思われますか?
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山房の海紅 2014/06/03-05:05 No.[972]
eiko yachimoto sama
御紹介下さった指導方針が古式に沿うもので、日本人相手の連句指導者もすべて(殆んど?)同じように説いていることを承知しています。
しかし、その根拠とする古俳諧の用例をどれほど御存じかというと、ボクには怪しい気がするのです。
発句と平句の区別はそれほど微妙でむずかしい。余はもう少し勉強した上で…。
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eiko yachimoto 2014/06/03-07:23 No.[973]
thank you for your kind response.
私も、勉強します。ありがとうございました。
瑛子
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文緒 2014/06/05-10:35 No.[974]
ていねいなご説明、ありがとうございます。
「上げて」で、「昼の月」が、朧な宇宙船のようにみえてきます。
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