白山句会会報 No.41   ホーム
白山句会 白山句会報第41号

  □日時 2019年11月10日(日)
  □会場 小石川後楽園 涵徳亭 (広間)
 
 心地よい小春日和の中、小石川後楽園の日本庭園を吟行しました。特別名勝・特別史跡に指定された庭園、池には秋の景色を映していました。芭蕉会議の面々以外の人々も吟行され、句会が行われていました。句会場には、無迅さんのお席を設けて小さなお花を供え、無迅さんを偲ぶ追悼句会になりました。 <右稀記>


〈 俳 話 少 々 〉

 本日は哀しいことながら、伊藤無迅さんの追悼句会になった。だからといって、追悼句だけを詠むことを求めていない。昨日でも明日でもない今日を、句作を以て実感する生活は、おのずと無迅さんの供養でもある。
 マスコミが「ベルリンの壁崩壊から30年」というテーマで話をしていた。それを聞いて、世界が橋(bridge)と壁(wall、barrier)で出来ているとすれば、俳諧という会席(座)の文芸は橋の役割に似ているかも。求められるうちは、日常を振り返る際の橋の役割を果たしたいと思う。
 本日の海紅選はいつもより多い。それは皆さんに無迅追悼という主題があって生まれた句が多かったからだ。いつもは、何を主題にした句なのか曖昧なものが多い。今日に限らず、神祇・釈教・恋・無常、常に自分のこの句は何を描いたものなのかを考えながら自己表現に挑戦してほしい。
 こんな話をした。もっと話したような気がするが、忘れたことは次の機会にしたい。〈海紅記〉


〈 句 会 報 告 〉
一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で、表現を改めた句が含まれています。また、海紅選は互選の点数に含まれていません。

☆ 海紅先生選 ☆

旅なれて似合ふピアスと赤い羽根 和子
冬晴れに古人の話して別る はな
秋萩や待ち合はせまで待つ時間 智子
小春日や偲ぶ集ひにふさはしく 馨子
秋句会亡き人も来る縄暖簾 貴美
《評》句会と居酒屋に分離しているので、例えば「亡き人の句座に秋草供へ待つ」「亡き人も来よ秋灯す縄暖簾」などと分ける学習をしたい。



☆ 海紅先生予選 ☆
秋高し古民家カフェでモンブラン    千寿
ストローにタピオカ秋はるるるるる 正子
拾ひ歩く子の手に団栗宝物
西行碑めぐる落葉に沢の音 香粒
ツワブキの標のやうに点々と うらら
鳰の水澄みわたる空映しけり 馨子
小春空もの云ひたげな亀とをり 香粒
《注》以下は追悼句と理解したもの。
褒められしこと嬉しくて花カンナ 馨子
冬天を切り裂くジェット機は西へ 正子
小春日の席を設けて追悼す 美和子
その人の細き背中や冬日和 しのぶこ
初しぐれ心の中の野辺送り 貴美
この世でのやさしさの数星月夜 智子
編集長見事に勤め星の旅 梨花
思ひ出は笑顔ばかりの秋の空
冬立ちてなほ傍にゐる御魂かな 真美
遺されし名句名声冬紅葉 つゆ草
投函の間に合はずして逝きし秋 つゆ草
空一面小春日和の句会かな ふみ子
逝きし人十一月の日差しかな ふみ子
空席の一月あまり枇杷の花 うらら
行く秋やメールに残る(笑) うらら
《注》(笑)に「かつこわらひ」とルビが付いていた。面白い冒険として選んでみた。  



☆ 互選結果 ☆

6 思ひ出は笑顔ばかりの秋の空
5 そぞろ寒心の穴に泌みる酒 智子
4 爽籟や遥かなる野に眼を細む 窓花
4 その人の細き背中や冬日和 しのぶこ
4 この世でのやさしさの数星月夜 智子
3 まゆみの実大和古道の親子旅 美知子
3 影を踏み合ふ子になびく秋桜 真美
3 はうばうに微笑むおかめ酉の市 奈津美
3 小春空もの云ひたげな亀とをり 香粒
3 時雨月神と思ひし棺の友 梨花
3 労りつ翁媼の小春かな 喜美子
3 俳諧といふものここに通夜の月 瑛子  
3 空席の一月あまり枇杷の花 うらら
3 初しぐれ心の中の野辺送り 貴美
3 ツワブキの標のやうに点々と うらら
2 拾ひ歩く子の手に団栗宝物
2 泣き顔のあとの笑顔や柿落葉 しのぶこ
2 小春日や偲ぶ集ひにふさはしく 馨子
2 秋句会亡き人もくる縄暖簾 貴美
2 空一面小春日和の句会かな ふみ子
2 投函の間に合はずして逝きし秋 つゆ草
2 石蕗の問ふ草葉の陰といふは何処 海紅
2 冬支度一つ松は軽くなり
2 教室の灯のまばらなる星月夜 真美
2 旅なれて似合ふピアスと赤い羽根 和子
2 遺されし名句名声冬紅葉 つゆ草
1 つれづれをしみじみ思ふ木の葉髪 つゆ草
1 遅咲きの君が主役の帰り花 光江
1 冬天を切り裂くジェット機は西へ 正子
1 竹の春もみあふラガーの野性かな
1 冬立ちてなほ傍にゐる御魂かな 真美
1 露ながら遺影の笑みの磁力かな 瑛子
1 山茶花を離れて通る孤独かな しのぶこ
1 ストロー通るタピオカ秋はるるるるる 正子
1 吾亦紅草間にゆれて秀句選る 美知子
1 小春日や水面の木々は桃源郷 ふみ子
1 逝きし人十一月の日差しかな ふみ子
1 墨の香や奈良町あたり秋夕べ
1 秋高し古民家カフェでモンブラン 千寿
1 みそなはせ小春に集ふ二十人 海紅
1 主なき旧家の蔵に蔦紅葉 千寿
1 西行碑めぐる落葉に沢の音 香粒
1 小春日の席を設けて追悼す 美知子
1 蓬けたる人どんぐりを手にくれし 月子

 


☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、村上智子、尾見谷静枝、三木つゆ草、椎名美知子、谷美雪、青柳光江、大石しのぶこ、鈴木香粒、佐藤馨子、金子はな、宇田川うらら、静順子(初参加)、高橋千寿、田中正子、平塚ふみ子、月岡糀、梶原真美、山崎右稀(以上、19名)

☆欠席投句者☆ (敬称略、順不同)
荒井奈津美、礒部和子、大江月子、荻原貴美、尾崎喜美子(懇親会出席)、柴田憲、根本梨花(懇親会出席)、古崎笙、眞杉窓花、谷地元瑛子、備後春代(以上、11名)


<以上取りまとめ、山崎右稀>

< 了 >

 


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