白山句会 白山句会報第40号
□日時 2019年6月8日(土)
□会場 宋雲院(台東区東上野)
白山句会で宋雲院(臨済宗)の御世話になるのは四月に次いで二度目。門前のクチナシの花が香り、ナンテンはお天気雨のように花をこぼして明るい一日、みな迷うことなく集合できたようだ。会場の確保や運営に携わった方々に感謝申し上げる。このたびも三句投句、五句選で滞りなく進行。なお、前回、遠来の梅田ひろし氏にお願いしたように、今回も俳歴の長い梨花さんに無制限に選句をお願いした。今後も、参加者の中の一名に、このように互選と区別して、無制限に選をお願いする方法を継続してはどうだろうか。
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〈 俳 話 少 々 〉
論文を読む会で始まった「ゼロからの俳句塾」について、第一回は和歌伝統としての季題に焦点をあてたが、その季題の魅力を理解するためには、雑の句(無季の句)を承認する必要があると思うので、次回以降に挑戦したいというような話をした。
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〈 句 会 報 告 〉
一部の作品について、作者の意図をそれない範囲で、表現を改めた句が含まれています。また、海紅選・梨花選は互選の点数に含まれていません。
☆ 海紅選 ☆
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惚けたる母と母の日ピクニック |
由美 |
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ふんすいや修学旅行子の指濡らし |
由美 |
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千の手に組紐もあり最澄忌 |
無迅 |
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けふからは要介護1枇杷熟るる |
無迅 |
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赤茄子や食べられるもの増えし庭 |
香粒 |
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病む人に見せばや今朝の百合ひらく |
香粒 |
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入梅して草のにほひの濃くなりし |
貴美 |
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梅雨入りを待ちて繙く本のあり |
貴美 |
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欝飛ばす上野の森の茂りかな |
ふみ子 |
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ひめぢよをんの咲き満ちてある空き家かな |
月子 |
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紫陽花の飛びたき花もその中に |
梨花 |
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《評》「飛びたき花」は観念的でリアリティに欠けるが、そのリズムには安定したものがある。 |
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山若葉飛行機雲のクロスする |
糀 |
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母国語で語りゆくらし夏帽子 |
しのぶこ |
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雨降りて紫陽花だけが晴れやかに |
奈津美 |
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《評》「雨の紫陽花が眩しい」とい言っているだけで、まだまだ省略表現の
学習が必要だが、素直な実感を評価して入選とした。 |
☆梨花選☆
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欝飛ばす上野の森の茂りかな |
ふみ子 |
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五月雨の傘中にある孤の世界 |
ふみ子 |
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新緑や呼吸の跡といふ水泡 |
真美 |
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夏シャツや秒針胸を指してゐる |
真美 |
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地いわしを買ひ魚左次の日よけかな |
瑛子 |
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母国語で語りゆくらし夏帽子 |
しのぶこ |
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門前の蕎麦屋に風の若楓 |
光江 |
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ひとつ忘れひとつを区切る梅雨の入り |
香粒 |
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ひめぢよをんの咲き満ちてある空き家かな |
月子 |
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千の手に組紐もあり最澄忌 |
無迅 |
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梅雨晴れや家事擲つて街にゆく |
貴美 |
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梅酒つけ余生わづかに延びにけり |
つゆ草 |
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梅雨に入る会へない日々を指折りて |
糀 |
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健吉忌かねて『ことばの歳時記』買ふ |
憲 |
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惚けたる母と母の日ピクニック |
由美 |
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☆ 互選結果 ☆
5 |
母国語で語りゆくらし夏帽子 |
しのぶこ |
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5 |
ひめぢよをんの咲き満ちてある空き家かな |
月子 |
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4 |
青桐を一つ残して園閉ぢる |
千寿 |
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《評》開園・閉園の閉園なのか、廃業(運営をやめること)なのか。再考の余地あり。 |
3 |
病む人に見せばや今朝の百合ひらく |
香粒 |
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3 |
子と聞いてゐる鈴蘭の鈴の音 |
梨花 |
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3 |
入梅して草のにほひの濃くなりし |
貴美 |
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3 |
梅雨入りを待ちて繙く本のあり |
貴美 |
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3 |
うすみどり一滴終の新茶かな |
憲 |
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2 |
葭簀かげ腹丸見えのレトリバー |
窓花 |
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2 |
道すがらたふたふと生る誰の枇杷 |
窓花 |
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《評》「道すがら」の効果なし。擬態語「たふたふと」のイメージ浮かばず。 |
2 |
西郷どん餌場は広し燕来る |
和子 |
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2 |
梅雨空や急勾配の寺の屋根 |
千寿 |
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2 |
赤茄子や食べられるもの増えし庭 |
香粒 |
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2 |
ひとつ忘れひとつを区切る梅雨の入り |
香粒 |
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2 |
明け早し誘眠剤の効未だ |
月子 |
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2 |
町中や隣家気づかふ竹落葉 |
泰司 |
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2 |
時の日や陵まへの花時計 |
美雪 |
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2 |
新緑や呼吸の跡といふ水泡 |
真美 |
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2 |
裏声のボーイソプラノ風薫る |
つゆ草 |
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2 |
而して非凡なる日々草を引く |
海紅 |
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1 |
欄間あけば今日ぞたちゆく燕の子 |
泰司 |
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1 |
サーファーの彼待つ浜の夏の夕 |
泰司 |
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1 |
山若葉飛行機雲のクロスする |
糀 |
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1 |
万緑や庭師の名前セバスチャン |
糀 |
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1 |
テーブルに湯飲みの二つ走り梅雨 |
喜美子 |
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1 |
病む鳥に手をさしのべる蓮かな |
喜美子 |
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1 |
蓮池に思ひ巡らし初句会 |
りえこ |
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《評》「初句会」は新年の季題ゆえ再考。だんだん慣れます。 |
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1 |
ふんすいや修学旅行子の指濡らし |
由美 |
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1 |
町角の地図よみなほす夏つばめ |
しのぶこ |
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1 |
反戦のビラを掠めて夏つばめ |
ひろし |
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1 |
腕伸ばす子の大きなる薄暑かな |
真美 |
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1 |
紫陽花の雨露留め心満つ |
右稀 |
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1 |
夏草や歩道を狭め犬もよけ |
ムーミン |
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1 |
梅酒つけ余生わづかに延びにけり |
つゆ草 |
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1 |
五月雨の傘中にある孤の世界 |
ふみ子 |
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1 |
けふからは要介護1枇杷熟るる |
無迅 |
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1 |
門前の蕎麦屋に風の若楓 |
光江 |
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1 |
青嵐木洩れ日揺れる遊歩道 |
春代 |
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1 |
分別の限りつくせよほととぎず |
笙 |
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☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
鈴木香粒・荻原貴美・谷 美雪・青柳光江・根本梨花・大石しのぶこ・水野ムーミン・
三木つゆ草・平塚ふみ子・相澤泰司・高橋千寿・いまぜきりえこ(初参加)・荒井奈津美・
山崎右稀・月岡 糀・梶原真美・谷地海紅(以上、17名)
☆欠席投句者☆ (敬称略、順不同)
伊藤無迅・村上智子・谷地元瑛子・大江月子・梅田ひろし・真杉窓花・備後春代・
西野由美・古崎笙・柴田憲・礒部和子(以上、11名)
<以上取りまとめ、海紅> |
< 了 >
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