白山句会 白山句会報第32号
□ 日時 平成29年12月2日(土)
□ 句会場 東洋大学白山校舎6号館、6404教室
一昨年から進めていた芭蕉会議創立10周年記念の記念誌が漸く11月に完成した。
このため11年目に当たる今年中に10周年記念パーティーを開催し、一区切りをつけることになった。すなわち今年最後のイベントとなる白山句会の開催日に合わせて記念パーティーを開催。会場はトレス・ダイニング(東洋大学白山校舎8号館1F)。句会場も久しぶりに東洋大学白山校舎を利用。遠路を久しぶりに御出席くださった吉田いろはさん(いわき市)や市川千年さん(高知県佐川町)を含む総勢27名、別室でパーティーの準備をしている若手を含む不在投句者を合わせると40名に届くかという盛況ぶりであった。
なお今年最初の白山句会は2月11日(日)、浅草寺界隈(台東区浅草)を予定。正式案内は1月中旬ごろ。日程確保の上ぜひご出席ください。
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〈 俳 話 少 々 〉
今回はスケジュールの関係で実施しませんでした。
<以上、伊藤無迅記>
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〈 句 会 報 告 〉
* 一部作品については、作者の意図をそれない範囲で原句表現の一部を改めた句があります。
* 海紅選は互選点数に含まれておりません。
☆ 海紅選 ☆
一点のひかりとなりて鴨おり来 |
浩司 |
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再会に気もそぞろなり十二月 |
馨子 |
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命拾うて日傾くまで落葉掃く |
瑛子 |
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祝祭に遠く離れて日向ぼこ |
酢豚 |
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気にかかることに触れざり冬木の芽 |
宏美 |
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冬の雨喪中葉書の白きこと |
美知子 |
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初冬や丸太に登るパンダの子 |
由美 |
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寿ぎの朝の食卓冬薔薇 |
無迅 |
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ちやん付けで始まる遺言花八手 |
無迅 |
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論客のはんぺん好きやおでん鍋 |
うらら |
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猫の鼻ひんやり濡るる小春かな |
馨子 |
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カタコトの紅いほつぺの来る師走 |
智子 |
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冬帽子誰も誘はず誘はれず |
宏美 |
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十年を学び通して除夜の鐘 |
月子 |
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思ひ出がセーター解く手を止める |
和子 |
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学び舎に裸木すくと天を射る |
喜美子 |
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運慶は行列の先枯葉踏む |
うらら |
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暮らし上手は俳句上手と年の暮 |
ムーミン |
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☆ 互選結果 ☆
5 |
一点のひかりとなりて鴨おり来 |
浩司 |
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5 |
ちやん付けで始まる遺言花八手 |
無迅 |
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4 |
冬空のかくまで青き集ひかな |
海紅 |
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4 |
冬晴るる薬湯苦くほの甘し |
月子 |
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4 |
ボロボロになりし歳時記燗熱く |
つゆ草 |
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4 |
去るものの気配残さず落葉掻 |
しのぶこ |
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4 |
さざなみの中さゞなみや冬の湖 |
浩司 |
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4 |
カラカラと落ち葉遊ぶやスベリ台 |
春代 |
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4 |
福島の夜を浮き寝のスワンかな |
いろは |
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4 |
学び舎に裸木すくと天を射る |
喜美子 |
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4 |
のどやかにふくら雀の句会かな |
ひぐらし |
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4 |
暮らし上手は俳句上手と年の暮 |
ムーミン |
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3 |
マフラーにそつと包まん記念句集 |
いろは |
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3 |
命拾うて日傾くまで落葉掃く |
瑛子 |
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3 |
地におちて曼荼羅となる枯木影 |
浩司 |
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3 |
わらべ唄二人揃つて冬ぬくし |
真美 |
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3 |
一句二句とどめし冬晴十周年 |
山茶花 |
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3 |
飛べぬならそのまま花に冬の蝶 |
いろは |
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3 |
穂芒のそよぐと見せて光りけり |
酢豚 |
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3 |
水仙花祝ふがごとく笑むごとく |
喜美子 |
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3 |
冬帽子誰も誘はず誘はれず |
宏美 |
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2 |
祝祭に遠く離れて日向ぼこ |
酢豚 |
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2 |
足音も師走になりぬ店の先 |
貴美 |
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2 |
寿ぎの朝の食卓冬薔薇 |
無迅 |
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2 |
吊し柿輝きひとかたならざりき |
ひろし |
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2 |
冬晴れや節十年の一頁 |
ふみ子 |
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2 |
朝刊の自転車きしむ凍てし坂 |
山茶花 |
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2 |
山茶花は空家の庭でそつと咲く |
春代 |
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2 |
去る者は追はじと銀杏枯木かな |
失名 |
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1 |
小夜時雨停留場の薄あかり |
美知子 |
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1 |
天気図に樺太出でて冬の空 |
泰司 |
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1 |
悲しき事濁れる酒に注ぎ入れ |
こま女 |
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1 |
冬鳥や遅れて一羽とびたてり |
うらら |
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1 |
木枯らしのもう来る頃か鳥鋭声 |
ひろし |
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1 |
冬木立グーグルマップと立ち竦む |
智子 |
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1 |
東京に智恵子よ今日は冬日濃し |
海紅 |
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1 |
歳時記にあの日この日の小春日や |
梨花 |
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1 |
部屋中の障子を金に朝日かな |
瑛子 |
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1 |
誰がために吾が前立たむ都鳥 |
宏美 |
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1 |
蜜柑山十五の友と伊豆の宿 |
美雪 |
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1 |
霜月や波の間に間に陽キラキラ |
ふみ子 |
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1 |
冬うらら共に歩みし十周年 |
山茶花 |
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1 |
酉の市熊手の数は四軒分 |
村愁 |
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1 |
銀杏落葉街灯の下円舞台 |
美知子 |
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1 |
立ちどまる人なき冬の辻楽師 |
泰司 |
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1 |
小春日に障子よこぎる猫の影 |
村愁 |
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1 |
若者に紅葉おろしを教えた日 |
ムーミン |
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1 |
冬の日に雲をつらぬく力あり |
海紅 |
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1 |
風よ空よ電信柱を蔦紅葉 |
瑛子 |
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1 |
冬の雨喪中葉書の白きこと |
美知子 |
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1 |
紅葉は厳しい冬のメッセージ |
春代 |
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1 |
鑑真の船も越えしか冬怒濤 |
月子 |
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1 |
論客のはんぺん好きやおでん鍋 |
うらら |
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1 |
猫の鼻ひんやり濡るる小春かな |
馨子 |
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1 |
古里に弔ひ上げや秋の暮 |
こま女 |
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1 |
寒風や帽子ころころ運動場 |
静枝 |
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1 |
うす灯り差しで息子と年忘れ |
静枝 |
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1 |
十年を学び通して除夜の鐘 |
月子 |
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1 |
豊潤のひと日を迎へ冬うらら |
つゆ草 |
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1 |
思ひ出がセーター解く手を止める |
和子 |
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1 |
宗匠の声暖かき小春かな |
ひぐらし |
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1 |
盆栽の中の雪吊り父の顔 |
むらさき |
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1 |
運慶は行列の先枯葉踏む |
うらら |
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1 |
禅僧の難解眠し漱石忌 |
憲 |
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1 |
しぐれ忌の碑に苔いつくしむ如く |
むらさき |
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1 |
失恋の涙じわつとおでん湯気 |
由美 |
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☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、内藤村愁、尾崎喜美子、江田浩司、伊藤無迅、吉田いろは、青柳光江、
谷美雪、椎名美知子、丹野宏美、大江月子、萩原貴美、鈴木松江、中村こま女、
谷地元瑛子、三木つゆ草、宇田川うらら、小出山茶花、市川千年、根本梨花、
相澤泰司、村上智子、備後春代、磯部和子、尾見谷静枝、平塚ふみ子、水野ムーミン
(以上、27名)
☆欠席投句者☆ (敬称略、順不同、*はパーティー会場設営のため)
安居酢豚、むらさき、植田ひぐらし、西野由美、柴田憲、梅田ひろし、
*荒井奈津美、*佐藤馨子、*眞杉窓花、*山崎右稀、*梶原真美、*大石しのぶこ
(以上、12名)
<以上、大石しのぶこ、記> |
<海紅先生の俳話要諦>
当日句会席上で主宰が話された内容を、主宰が後日芭蕉会議の
サイト上(掲示板)で発表されましたので以下に引用しました。
12月2日(土)の白山句会席上、〈明日の句会に向けて、一句に三日かかりましたが(できはともかく)……〉(「海紅句抄」12/01コメント)と書き込んだ千年氏の句を知りたいという発言があり、千年氏は照れながらも〈ダルマ朝日を句材にして奮闘したが、皆さんの選にはもれてしまった〉と自句の紹介をしてくれました。ダルマ朝日という蜃気楼現象を知る人はその場に少なく、ボクはその場を繕うつもりで、句作には、(1)瞬発力が問われる吟行と、(2)歳時記を開き時間をかける呻吟という二つの方法があるというような話をしましたが、上手にお伝えできませんでした。それで、ここにあらためて言い直しておきたいと思います。
呻吟は時間をかけて言葉を慎重に選ぶから、たまに深みのある句が生まれるけれど、句会では重くれてしまって、読者に警戒される場合も少なくない。それを克服するためには、なるべく、(1)の吟行という方法で作る方がよい。つまり、制限時間内に「句材を探す眼力」「句材を言葉にする語彙力」「時間内にまとめる表現力」を養うのです。これを申し上げたかった。
以下に、ボクが(1)、すなわち短時間勝負の吟行(嘱目詠)で気をつけている7項目を示して参考に供します。決まった時間内に集中して句作するのは、もし出来なかったら怖いと思ったりしたものですが、実はその真剣さこそが自己を見つめる最良の道だと思っています。
なお、つねづね、投句終了までは私語を慎んで、ギリギリまで頑張っている人に気を遣ってくれと申し上げているのも、これが理由でありました。
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<自作の点検7項目>
1)観察(写生)したか →姿先情後
2)ヘソ(中核)はあるか →感動の焦点
3)必要な言葉のみに絞ったか→文章力
4)言葉を飾っていないか →無駄の削除
5)感情に酔っていないか →私意を捨てよ
6)全体の調子は整ったか →舌頭に千転
7)自分の句と思えるか →主題の確認
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<芭蕉会議10周年記念パーティー>
白山句会が予定より若干延びて終了すると直ちに白山キャンパス125周年記念館1階にあるパーティー会場、レストラン「トレス・ダイニング」に移動した。若手による会場設営が首尾よく終わったかが気になる。駆けつけると眞杉窓花君、荒井奈津美さんを中心に若手会員がしっかりと会場を整えておいてくれた。
早速窓花君の司会進行でパーティーがスタート、因みに式次第は次の通り。
・開会の辞 伊藤無迅
・主宰挨拶 谷地海紅
・乾杯音頭 尾崎喜美子
・アトラクション(1) 荒井奈津美
・参会者紹介および挨拶(1)
・アトラクション(2) 荒井奈津美
・参会者紹介および挨拶(2)
・閉会の辞(中締め) 根本文子
主宰挨拶では、10年間活動を続けられたことへの感慨と会員への御礼、特に芭蕉会議のインフラとも言えるサイト運営にご協力を頂いている株式会社カルテモ様への御礼、さらに記念誌発行に関する編集委員への御礼などお話があった。
また参会者の紹介および挨拶では、以下の方の紹介およびご挨拶を頂いた。
・遠路ご参集頂いた方 吉田いろはさん、市川千年さん
・潟Jルテモ 代表取締役 内藤邦雄様
・句会等で名前が知られているが、お顔を御存じない欠席投句常連の方
柴田憲さん、礒部和子さん
アトラクションは荒井奈津美さんの進行で始まり、パソコンとプロジュクターを使いスクリーンに趣向を投影するというITを駆使したものであった。趣向の内容は過去に行った白山句会の主宰選や互選最高点の俳句を投影し作者を当てるもの、また比較的人口に膾炙された有名俳句の作家を当てるというクイズ形式のもので、正解者には賞品が送られ会場は大いに盛り上がった。また参会者全員に記念誌2誌(『芭蕉会議の十年』『芭蕉会議俳句選集』)が贈呈され、さらに記念誌の即売コーナーも設けられた。即売コーナーでは希望者が殺到し、中には10冊以上の購入者も数人出現、なんとパーティー時間内に約100冊の売上げがあった。
2時間のパーティーは盛会の裡に終わった。あっという間と言ってよいだろう。名残りは尽きなかったが、引き続き予定されている懇親会へと流れて、今年最後の親交を温め合った。
なお、今回の記念パーティーは荒井奈津美さん、眞杉窓花さん、大石しのぶこさん、山崎右稀さん、梶原真美さんの若手会員が数か月前から準備に当たってくれた。また記念誌配布および会計で三木つゆ草さん、記念誌即売コーナーでは宇田川うららさん、佐藤馨子さんに大変お世話になった。末尾ながら、この場を借りて感謝したい。
なお、パーティー出席者は以下の通りである(申込順、敬称略)。
谷地海紅、尾崎喜美子、江田浩司、伊藤無迅、荒井奈津美、吉田いろは、青柳光江、
谷 美雪、椎名美知子、丹野宏美、菅原通済、内藤邦雄、内藤夫人、宇田川うらら、
佐藤馨子、荻原貴美、尾見谷静枝、月岡 糀、中村こま女、梶原真美、谷地元瑛子、
眞杉窓花、三木つゆ草、大江月子、小出山茶花、市川千年、柴田 憲、根本梨花、
大石しのぶこ、村上智子、高本直子、備後春代、鈴木松江、山崎右稀、相澤泰司、
礒部和子、平塚ふみ子、水野ムーミン、植田ひぐらし(以上39名)。
<平成29年12月29日 伊藤無迅>
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< 了 >
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