白山句会 白山句会報第31号
□ 日時 平成29年10月14日(土)
□ 句会場 ルノアール巣鴨駅前店二号会議室
今回は小雨の中、巣鴨駅界隈のとげ抜き地蔵通り吟行を行った。今回の句会で特筆すべきことは何といっても、フランスからボンジ・マリナさんという美しい女性が参加されたことだ。ボンジさんはワーキングビザで来日、現在潟Jルテモの内藤さんのもとで働いておられる。日本語も堪能で日本文化、特に俳句に興味をもち小林一茶に関する著作をフランスで出版するという夢をおもちである。滞在中の保護者ともいうべき内藤社長夫妻も参加された。句会参加者が最終的に24名となり定員16名の句会場は鮨詰め状態であった。ボンジさんをはじめ出席者の皆さまには大変窮屈な思いを掛けしましたことお詫び申し上げます。
次回は12月2日(土)を予定しております。句会後に「芭蕉会議十周年記念誌」の発行記念パーティーを予定しております。場所は白山キャンパス内に句会場、およびパーティー会場を確保しました。会員様の多数出席を期待しております。
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〈 俳 話 少 々 〉
今回は時間的な制約から実施しませんでした。
<以上、伊藤無迅記>
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〈 句 会 報 告 〉
* 一部作品については、作者の意図をそれない範囲で原句表現の一部を改めた句があります。
* 海紅選は互選点数に含まれておりません。
☆ 海紅選 ☆
いわし雲今おだやかに暮らしてる |
美知子 |
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焼き団子の匂ふ辺りに秋地蔵 |
松江 |
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走りそばここが慶喜の屋敷跡 |
美雪 |
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秋雨の地蔵通りの熱気かな |
喜美子 |
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秋霖や答へは言はぬ地蔵さま |
月子 |
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古寺の障子にぽつと秋灯る |
静枝 |
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木犀の香にさそはれて寺の奥 |
奈津美 |
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肌寒しミセス洋品人だかり |
美雪 |
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秋霖に鳩の濡れゐる大都会 |
梨花 |
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登校の子らより高き秋桜 |
真美 |
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一世紀生きると決めてとろろ飯 |
和子 |
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注:ここには本選のみを掲載。予選については、各自で今後の修練の励みにして下さいますようお願いします。
☆ 互選結果 ☆
6 |
病みてなほ筆美しき秋便り |
つゆ草 |
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6 |
菊の香や江戸の微笑みする六地蔵 |
貴美 |
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5 |
秋霖や答へは言はぬ地蔵さま |
月子 |
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5 |
秋深し老樹ほのかに色づきぬ |
ふみ子 |
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4 |
いわし雲今おだやかに暮らしてる |
美知子 |
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4 |
十六夜や読まずに捨てる古日記 |
うらら |
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4 |
秋雨や猫ふりかへる石畳 |
村愁 |
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4 |
古寺の障子にぽつと秋灯る |
静枝 |
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4 |
香煙にかざす手白し秋澄みぬ |
こま女 |
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4 |
鐘は今も二度打つ都電ゑのこ草 |
海紅 |
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3 |
七五三袴の裾を短めに |
光江 |
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3 |
サルビアの赤を忘れし夕陽かな |
繁 |
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3 |
すいつちよんやさしく鳴いてもう居ない |
梨花 |
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3 |
店先に味覚の秋が山盛に |
春代 |
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3 |
登校の子らより高き秋桜 |
真美 |
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2 |
温燗と新そばすすり雨ながめ |
奈津美 |
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2 |
惚け防止あびる白煙秋海棠 |
喜美子 |
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2 |
雨の日は愚痴を言ふまいぬくめ酒 |
ふみ子 |
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2 |
撫でるやうに地蔵拭ふや秋夕焼 |
ひぐらし |
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2 |
盆栽に小さな季節薄紅葉 |
静枝 |
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2 |
満月が走る雲間にごあいさつ |
富美子 |
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巣鴨とげ抜き地蔵通り |
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2 |
秋冷に店の奥まで赤下着 |
美知子 |
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2 |
雨音に寝かしつけらる秋の夜 |
貴美 |
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2 |
秋の空人だかりせし赤パンツ |
村愁 |
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2 |
秋灯の揺れて歪みし愛し母 |
つゆ草 |
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2 |
雨巣鴨揃ひの筆で秋を詠む |
かおり |
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2 |
店頭の亀の子だはし暮の秋 |
無迅 |
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2 |
年の功隠してゆかし秋の蝶 |
つゆ草 |
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2 |
何事もなく夕餉の支度虫の声 |
美知子 |
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2 |
新蕎麦を賜る巣鴨のお縁日 |
喜美子 |
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2 |
御目洗ふ地蔵さやかに秋真昼 |
松江 |
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1 |
湯治場のかわきし木桶秋の蝶 |
由美 |
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1 |
うす寒やスカーフ巻いて句会行く |
貴美 |
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1 |
麦わらの屋根の背に山粧ふ |
静枝 |
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1 |
復興の祈りに唱和し虫すだく |
むらさき |
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1 |
同じ本買つてしまひき虫しぐれ |
月子 |
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1 |
墓碑の朱に墨でなぞりて秋彼岸 |
こま女 |
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1 |
曇天に染井桜の濡れ落ち葉 |
村愁 |
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1 |
婚儀とも葬儀とも見え萩の道 |
海紅 |
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1 |
焼き団子の匂ふ辺りに秋地蔵 |
松江 |
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1 |
夕日さす水面きらめく影紅葉 |
光江 |
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1 |
街路樹も冬への支度葉ひらひら |
春代 |
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1 |
新涼や塩大福に人心地 |
ひぐらし |
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1 |
父作す不細工弁当運動会 |
窓花 |
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1 |
木犀の香にさそはれて寺の奥 |
奈津美 |
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1 |
肌寒しミセス洋品人だかり |
美雪 |
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1 |
ストリートカーとは都電蒲は穂に |
海紅 |
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1 |
歳時記を秋風と読む句会かな |
しのぶこ |
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1 |
団栗散り敷く梢の空の青さかな |
梨花 |
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1 |
秋時雨傘と帽子の忘れ物 |
しのぶこ |
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1 |
遠き日の街に降る雨秋の雨 |
うらら |
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1 |
秋散歩冷えた身体に赤パンツ |
ボンジ |
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☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、内藤村愁、内藤かおり、ボンジ・マリナ、梶原真美、伊藤無迅、
尾崎喜美子、荒井奈津美、大石しのぶこ、三木つゆ草、山崎右稀、谷美雪、
青柳光江、鈴木松江、大江月子、平塚ふみ子、宇田川うらら、荻原貴美、
中村こま女、大箭富美子、根本梨花、尾見谷静江、備後春代、椎名美知子
(以上、24名)
☆欠席投句者☆(敬称略・順不同)
柴田 憲、礒部和子、むらさき、西野由美、大下繁、植田ひぐらし、眞杉窓花、
(以上、7名)
<以上、大石しのぶこ、記> |
<海紅先生の俳話要諦>
フランスに一茶を紹介する夢を抱いているボンジ・マリナさんを、一度芭蕉会議に誘うつもりだという村愁氏に、それなら白山句会で日本文化に触れてもらうのがよいと提案した。よってフランス人である彼女を意識してひとつ話したい。短歌とか、俳句とか、たくさんの日本人はなぜ歌うのかという問いのひとつの答えは〈時間を止めて、自分の人生を確かめるため〉ではなかろうか。たしなみとか、もてなしとかいう文化を中心に、もし日本人的なモラルがあるとしたら、歌会とか句会という日常の節目で、来し方ゆく末を考える習慣がそれを作った。これといって自前の宗教を持たない日本人の、素朴な向上心がそこにある。むろん、俳句を詠む理由は人それぞれだろうが、今日の私の話は、芭蕉の生涯と作品が教えてくれたものと思って、参考にしていただければ幸い。
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<ミニとげ抜き地蔵通り吟行記>
朝から霧雨のような雨が降っている。確か白秋の詩に「利休鼠の雨が降る」という一節があった。どんな雨なのかそれを調べたことはない。利休鼠というのは基本が鼠色だからそれに少し緑をまぶしたものだろう。とすれば降ってるのかいないのか分からない春の雨にものの芽が背景にある雨かも知れない。しかし今日の秋の雨も降ったりやんだりで、背景に紅葉前の緑木があれば利休鼠の雨だろう。しかし白秋の詩は何となく暖かいイメージがあるからきっと春だろうなどと考えているうちに巣鴨駅に着いた。
実はとげ抜き地蔵の吟行はこれで三回目である。以前属していた俳句結社の吟行で十数年前に一度来ている。ただその時の記憶はほとんどない。一緒に吟行した句友の顔とその娘さんがこの商店街の喫茶店に嫁いでいてその喫茶店で休憩したことのみ憶えている。ひと通り商店街を歩いたあと、その喫茶店に寄ろうと探したが、それらしきものはなかった。少し雨足が強くなってきたのでお寺(高岩寺)の本堂で雨宿りをした。小雨の中観音を洗う善男善女の列は引きも切らない。白状すると私は長い間この洗い観音を、とげ抜き地蔵だと思っていた。しかし実は観音様で本尊のとげ抜き地蔵は、いわゆる秘仏で通常は拝観できないのである。ろくに観音の顔を拝顔することもなく勝手に地蔵尊と思いこんでいたのだ。そのことを知ったのは前回の吟行の時である。よく見ると「洗い観音」と表記があり、仏の頭部は髪が見事に結い上げられている。たしか地蔵尊は通常剃髪である。不思議に思い改めて高札を読むと件のごとくであった。しかしご老体はいちいち高札など読まない。いま目前で黙々と観音の胸部を拭っている媼は、とげ抜き地蔵のご利益を信じている筈だと勝手に思う。そう思うが直ぐに自分のアホさ加減に気付き反省する。「そんなことはどうでもイイこと、仏に変わりはない」と。<平成29年10月 伊藤無迅>
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< 了 >
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