白山句会 白山句会報第26号
□ 日時 平成28年10月10(月)、14時00分〜17時00分
□ 句会場 鎌倉生涯学習センター(きらら鎌倉) 第7集会室(4F)
今回は堀口希望さん、西野由美さんのご協力で鎌倉吟行を実施した。前回の6月句会から久し振りの句会、かつ句会場が景勝地鎌倉ということもあり22人の参加者あった。雲がありスカッとした秋晴れとはいかなかったが、暑くもなく吟行には恵まれた天気であった。
前々回、前回の吟行もそうであったが、吟行形態が徐々に集団で歩くスタイルから、単独で吟行するスタイルに変わって来ている。思索を深める上でも当然の変化かも知れない。
今回は希望さんの発案で従来の句会形式から、清記をコピー形式にする点、選後の披講を個人がする点、選者の評を発表してもらう合評の採用、評が終わるまで作者名乗りをしない点などに変化があった。従来の方式からは、@全出句が手元に残る、A他人評を書き込める、B選者を記録に残せるなどの長所が見られ、参加者からも好評であった。次回以降参考にしてゆきたい。
懇親会も句会場に近く、落ち着いたほぼ個室に近い部屋で楽しい懇親の場となった。
次回は12月、都内での句会を予定しています。一か月前には案内する予定です。
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〈 俳 話 少 々 〉
今回は海紅先生から二つのお話があった。最初は「姿情を求めて◆写生以前―存在と名前」という題で、名の通った俳人の句の、季語の部分を空欄にした資料が配られた。句を読んで空欄にふさわしい季題を考えるという趣向である。
題目に「姿情」とあるが、これは明治以前から、姿が先か情が先かと常に議論されていたもので、子規が唱えた写生もその延長にあると言っても過言ではない。
一般に写生とは見たまま、そのままを写し取ることと考えられている。しかしそれだけで姿情は生まれない。眼前にあっても、その名前を知らなければ、それはあなたにとって存在しないに等しい。見えていても表現できないからだ。だから、言葉を豊かにしたい、季語のもつ世界を学習したい。言葉を覚えてはじめて、それはあなたの心の中に存在する。その結果、見えるものは見えないものに繋がっていく。外界が心と行き来して、読者(他者)にもわかる姿情を獲得するのだと思う。
もう一つの話は、付け筋を読む際に役立ててほしいという連句の展開予想図で、名付けて「Matorixへの試み」という。「Matorix」は谷地元瑛子さん提供の資料名で、それをもとづく海紅試案。詳細はこの予想図を試すなかでおのずとわかってゆくことでしょう。
<以上、伊藤無迅記>
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〈 句 会 報 告 〉
* 一部の作品については、作者の意図をそれない範囲で原句表現の一部を改めたものがあります。
* 今回、海紅選の本選5句は互選点数に含まれております。
☆ 海紅選 ☆
水澄むや人の恋しき切り通し |
喜美子 |
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秋参道花嫁通る武者通る |
ムーミン |
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海側に座る江ノ電秋の旅 |
うらら |
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秋天や改修なりし段葛 |
希望 |
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石仏の陰に竜胆切通し |
美雪 |
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*以上本選五句(点は互選に含まれています) |
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*以下は予選句(点は互選に含まれていません) |
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誰住むや秋思とどめる細格子 |
うらら |
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鎌倉の某小路草の花 |
希望 |
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甘藷(いも)育て我等を育て母白寿 |
静枝 |
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母と来し遠き昔や菊人形 |
静枝 |
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幾百年生きる覚悟の銀杏かな |
喜美子 |
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秋風を振り捨てて僧歩むなり |
ひろし |
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菊なます遺品となりし祖母の味 |
むらさき |
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境内の猫をかまふや秋涼し |
こま女 |
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神前の誓ひのことば天高し |
右稀 |
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萩散りしあと広々と萩の寺 |
酢豚 |
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☆ 互選結果 ☆
6 |
もののふの影を映して破蓮 |
つゆ草 |
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6 |
鎌倉の某小路草の花 |
希望 |
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5 |
秋参道花嫁通る武者通る |
ムーミン |
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5 |
秋麗や見習ひ巫女の朱の袴 |
つゆ草 |
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5 |
海側に座る江ノ電秋の旅 |
うらら |
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5 |
誰住むや秋思とどめる細格子 |
うらら |
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4 |
堂奥の仏小暗き曼珠沙華 |
酢豚 |
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4 |
秋風を振り捨てて僧歩むなり |
ひろし |
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4 |
秋澄みし静止画の海見下ろして |
うらら |
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4 |
古都の秋人力車追ふ見習夫 |
由美 |
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3 |
甘藷(いも)育て我等を育て母白寿 |
静枝 |
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3 |
水澄むや人の恋しき切り通し |
喜美子 |
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3 |
釈迦牟尼よ善男善女小鳥くる |
和子 |
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3 |
幾百年生きる覚悟の銀杏かな |
喜美子 |
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3 |
伽藍なき礎石の上の秋気かな |
無迅 |
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3 |
境内の猫をかまふや秋涼し |
こま女 |
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2 |
きざはしに漱石よぎる古寺の秋 |
憲 |
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2 |
石仏のまどろみ隠す散紅葉 |
こま女 |
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2 |
豆買ふや付いて来るなよ赤蜻蛉 |
こま女 |
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2 |
敗荷やここ通りやんせ六地蔵 |
窓花 |
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2 |
秋聴かん無患子(むくろじ)なる木に出会ひけり |
瑛子 |
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2 |
秋天や改修なりし段葛 |
希望 |
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2 |
板塀の続く町並み白芙蓉 |
馨子 |
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2 |
水引の半ば花落つうねりかな |
無迅 |
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2 |
歩道まで迎えに来たか萩の寺 |
糀 |
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2 |
背の高き秋明菊のつぼみ美し |
麻衣 |
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1 |
秋の日やただ潔し竹の寺 |
馨子 |
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1 |
石仏の陰に竜胆切通し |
美雪 |
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1 |
白萩をかき分け参る古き寺 |
しのぶこ |
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1 |
老舗ハム厚切りされて天高し |
つゆ草 |
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1 |
秋霖の沁み入る午後や頁繰る |
貴美 |
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1 |
やぐら墓かすかに残る虫の声 |
ひろし |
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1 |
秋曇稲村ケ崎古戦場 |
窓花 |
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1 |
招かれし句会の里も山眠る |
和子 |
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1 |
岩肌に小さき鳥居古都の秋 |
貴美 |
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1 |
竹寺や爽涼の風透きとほり |
ひろし |
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1 |
かの人の小貝とまごふ萩こぼる |
酢豚 |
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1 |
宮古島サシバの渡り空動く |
静枝 |
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1 |
夏行けりサザンビーチに失恋歌 |
窓花 |
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1 |
華頂邸ロココの庭にトンボ来る |
瑛子 |
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1 |
秋涼し鳶八幡宮を見下ろして |
糀 |
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1 |
長月の早や長袖の二十人 |
海紅 |
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1 |
ふと涙して秋風のせいならず |
海紅 |
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1 |
頼朝の墓は護ると秋藪蚊 |
希望 |
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1 |
抱一の銀色恋し秋の草 |
しのぶこ |
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1 |
神前の誓ひのことば天高し |
右稀 |
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1 |
ほろびゆきし段葛こそ秋の夢 |
瑛子 |
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1 |
ぶらさげて枝ごとゆらしくもの糸 |
麻衣 |
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1 |
笙太鼓秋天ひびく婚儀かな |
由美 |
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1 |
英語で太刀をたづねらる古都の秋 |
由美 |
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☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、堀口希望、安居酢豚、尾崎喜美子、根本梨花、梅田ひろし、谷 美雪、
水野ムーミン、三木つゆ草、谷地元瑛子、中村こま女、伊藤無迅、眞杉窓花、
西野由美、宇田川うらら、佐藤馨子、荻原貴美、月岡糀、大石しのぶこ、
山崎右稀、尾見谷静枝、菅原麻衣 (以上、22名)
☆欠席投句者☆
磯部和子、柴田憲、むらさき (以上、3名)
<以上、西野由美記> |
< 了 >
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