白山句会 白山句会報第24号
□ 日時 平成28年4月9日(土)、14時00分〜17時
□ 句会場 玉川区民会館、第5集会室(4F)
今回の白山句会は、三木つゆ草さんのお世話で丁度一年前に句会を行なった等々力にある玉川区民会館で行なうことが出来た。今年は桜の開花が例年に比べ早かったので、落花や花吹雪を存分に味わう一日となり、参加者も22名と盛会であった。久し振りに梅田ひろしさんが行田市から、久保(旧姓情野)由希さんは長岡市からと遠路をお出かけくださり、療養中の谷美雪さんも久し振りに明るいお顔を見せてくれた。また新会員の尾見谷静枝さんが初参加、いきなり高点句を披露された。
次回は6月11日(土)で、月岡糀さんのお世話で亀戸文化センタを予定しています。
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〈 俳 話 少 々 〉
今回は梅田ひろしさんにお願いした。当日しかも会場でお願いしたのにも関わらず、大変味のあるお話をして戴いた。要約すると以下の通り。
梅田さんは俳句初学のころ、地元で開かれた高名な女流俳人の講話を、たまたま聴く機会があったそうです。講話は「俳句は足で作る(詠む)ものである」という内容のものであったそうです。梅田さんは、それまで、どちらかと言えば頭で俳句を詠むという句作姿勢であったそうです、この話を聴き痛く反省し、それからは、従前の句作姿勢を改め、天地万物に造化の妙を得る、足で句材を求める姿勢に変えたそうです。以後その姿勢を貫いて今日に至るとのことです。
<以上、伊藤無迅記>
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〈 句 会 報 告 〉
* 一部の作品については、作者の意図をそれない範囲で原句表現の一部を改めたものがあります。
* 海紅選の句は互選点数に含まれておりません。
☆ 海紅選 ☆
花屑の街に降り佇つ句会かな |
無迅 |
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囀りのなかの仏の伏目かな |
無迅 |
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網棚に忘れし土産花の雨 |
ふみ子 |
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二人して土鳩に餌付け花の下 |
ふみ子 |
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陽炎や子ら駆けまはる妃の古墳 |
由美 |
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農民の横穴古墳シャガの花 |
由美 |
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散る花を払はぬ茶屋の緋毛氈 |
ひろかず |
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花ふぶき御堂の中を明るうす |
こま女 |
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ふらここや晴れの舞台の半ズボン |
宏美 |
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芹摘みし去年の場所へ回り道 |
静枝 |
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蝌蚪楽しふたこたまがわ昼下り |
瑛子 |
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うららかや渓谷の路譲りあふ |
ひぐらし |
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釈迦牟尼の指さす天地花の舞ふ |
ひぐらし |
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桜咲く家具を揃へる親子連れ |
美知子 |
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☆ 互選結果 ☆
6 |
囀りのなかの仏の伏目かな |
無迅 |
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5 |
花下にあり野暮一件を忘るべく |
海紅 |
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5 |
陽炎や子ら駆けまはる妃の古墳 |
由美 |
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5 |
親忙し口が顔なる燕の子 |
静枝 |
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4 |
うららかや渓谷の路譲りあふ |
ひぐらし |
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4 |
陽炎や子ら駆けまはる妃の古墳 |
由美 |
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4 |
空吸うて池の面碧き風ひかる |
むらさき |
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4 |
花散るや寺に草木供養の碑 |
ひぐらし |
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4 |
ほつほつと銀杏芽吹の青い恋 |
梨花 |
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4 |
散る花を払はぬ茶屋の緋毛氈 |
ひろかず |
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4 |
花過ぎの空に安堵の気配あり |
酢豚 |
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4 |
花びらをよけて行き交ふ蟻のいて |
うらら |
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4 |
本堂の庇映して蝌蚪の水 |
海紅 |
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4 |
花の塵浄める僧のいる静寂 |
つゆ草 |
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4 |
桜咲く家具を揃へる親子連れ |
美知子 |
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3 |
苦き汁なめなめ完成タンポポ笛 |
美雪 |
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3 |
花ふぶき御堂の中を明るうす |
こま女 |
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3 |
薄紅の足跡のこし水温む |
由希 |
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3 |
新入生田舎の匂ひ纏つつ |
窓花 |
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2 |
春昼や五つ聞き分く鳥の声 |
うらら |
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2 |
農民の横穴古墳シャガの花 |
由美 |
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2 |
ふらここや晴れの舞台の半ズボン |
宏美 |
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2 |
釈迦牟尼の指さす天地花の舞ふ |
ひぐらし |
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2 |
竹林に微睡む猫や春の午後 |
由希 |
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1 |
風やんで落花それぞれ一人なる |
海紅 |
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1 |
まろ寝する犬とかたいと花の下 |
ひろかず |
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1 |
満開の花などいらぬ鬱とうしい |
こま女 |
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1 |
花昏れてせせらぎ夜を招きをり |
和子 |
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1 |
山吹のやはら花びら散歩道 |
山茶花 |
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1 |
花も鳥も今をよろこぶ今日一日 |
松江 |
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1 |
網棚に忘れし土産花の雨 |
ふみ子 |
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1 |
落花をも寄せつけざりし閻魔王 |
ひろし |
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1 |
救急の音に負けじと花吹雪 |
美雪 |
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1 |
春愁ひ沈める文の藍淡し |
こま女 |
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1 |
蝌蚪楽しふたこたまがわ昼下り |
瑛子 |
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1 |
風やみて刹那に落つる春の由 |
奈津美 |
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1 |
また一つ墨田に橋や花の雲 |
月子 |
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1 |
校庭に春の声聞くボール投げ |
貴美 |
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1 |
古寺を訪ふ人なしに榧の咲く |
ひろかず |
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1 |
春の風電車に三つ笑顔乘せ |
美知子 |
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1 |
春嵐髪にまつわる弁一つ |
奈津美 |
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1 |
花吹雪黙して眺む阿と吽と |
うらら |
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1 |
桜散る心の暗きところにも |
酢豚 |
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1 |
土手行けば浴び放題の春うらら |
つゆ草 |
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☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅、梅田ひろし、相澤ひろかず、根本梨花、大江月子、小出山茶花、中村こま女、鈴木松江、
椎名美知子、平塚ふみ子、宇田川うらら、谷地元瑛子、植田ひぐらし、三木つゆ草、西野由美、
谷 美雪、荒井奈津美、久保由希、荻原貴美、眞杉窓花、尾見谷静枝、伊藤無迅 (22人)
<欠席投句者>
安居酢豚、礒部和子、丹野宏美、むらさき(4名)
<以上、眞杉窓花記>
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☆ 総評 ☆
今回は時間がなく、先生の総評はなかった。しかし梅田ひろしさんの俳話は、日頃海紅先生が話されている話と通じるものがあり大変興味深かった。やはり句作には、真実を見るという集中心、ひたむきさが必要ということを改めて勉強させて戴いた。
☆紀行寸話☆
句会に先だって九品仏(浄真寺)を吟行した。かねて訪問したいと思っていたが機会が無く、このたびそれがかなった。まず拝観料がないことに驚いてしまう。そこで気が付いたのだが、総じて関西は拝観料を取る寺院が多い。有名でもない寺が法外な拝観料を取ることもある。これに対し東京は案外オープンで、例えば増上寺や浅草寺に拝観料はない。観光客や市民が境内をわが物顔で闊歩している。その意味で関西は観光立国的な考えが定着しているのであろうか。
境内に入ると、すでにHさんが熱心に句帳に俳句を書き込んでいる。集中している様子なので、邪魔しないように遠回りして阿弥陀堂を拝観する。九品仏の由来になった九体の阿弥陀如来像は、三体ずつ分れて三つのお堂に鎮座していた。境内は桜が終わり、最後の落花の時期らしく、路傍には大量の花屑が溜まっていた。すでに新緑が目に心地よい。大樹には囀りもしきりである。
本堂に上がり釈迦如来坐像を拝観した。関西転勤時代に古寺巡礼をしたことがあるせいか、私には古色蒼然とした仏像が本当の仏のように思える。そういう仏像を見慣れているので、どうも彩色がほどこされた仏像を見ても、なんとなく御利益がないような気がしてしまう。釈迦如来像の前にある天蓋(てんがい)を見上げると、天女が色彩豊かに描かれていた(写真)。この天蓋は釈迦如来像の真上ではなく、その前にあるあるので、この本堂そのものを荘厳しているにちがいない。天女の姿が美しいので、しばし見惚れてしまう。
本堂を出ると、今度はSさんに呼びとめられた。聞くと未だ句作中だという。邪魔しては悪いので、軽い挨拶をして別れ、自分も句作モード(集中する時間)に入った。
<以上、伊藤無迅記>
< 了 >
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