白山句会会報 No.13   ホーム

白山句会 白山句会報第13号
日時   平成25年10月26日(土)、14時〜16時半
句会場  東洋大学白山校舎6号館4F会議室

 句会前、台風27・28号のアベック(古い?!現代風にはペアか)台風の影響が心配された。
句会数日前、先生が芭蕉会議掲示板に「無理をしないように」との書き込みをするほどであった。しかし幸いにも台風は前日関東を大きく太平洋側に逸れてくれた。しかし逸れた分だけ大陸から寒冷前線が入り込み、午前中は肌寒い雨が残った。このためか予定の周辺吟行を中止した人が多かった。参加者も少ないのではないかと思ったが、先生を含めて十一人の参加者があった。(なお、欠席投句は五名)
 また嬉しいことに、このところ無かった初参加の方が一名あった。窓花さんが妙齢の青森美人、棟方ひとえさんを伴ってきたのである。俳句は始めてとのことであるが、作品三句を準備しての参加でした。是非、今後も継続的に出席して戴きたいと思う。
 なお今回、当日の欠席投句が、お二人からあった。一人は先生が頻繁にメールを覗いてくれたので清記に間に合ったが、一人は残念ながら間に合わなかった。欠席投句はカルテモの向井さんが、ホームページから発する欠席投句のメールを受信し、句会世話人(今回は先生)に送るシステムになっている。大変便利な仕組みであるが、その分向井さんに負担が掛ることになる。今後は、この辺の事情を考慮し、欠席投句の締切日(例えば句会前々日など)を設ける必要性があることを痛感した。今後世話人の間で検討する事にした。

〈 句 会 報 告 〉
* 一部の作品については、作者の意図をそれない範囲で、原句表現の一部を改めたものがあります。

☆ 谷地海紅選 ☆

愛でて来し秋の里浸水のニュース聴く 美知子
碑の翳に戦禍の秋思かな
繋ぐ手や金木犀の香る道 馨子
起き抜けの布団の洞や秋の雨 無迅
触れたなら思ひこぼれし鳳仙花 うらら
秋の雨供花のセロファン濡らしけり 月子
向う見ずの台風の顔うかがひつ ムーミン
雨足を読みつつ秋の庭思ひつつ 美知子
   南三陸
初雁や地上の道は消ゆるとも 梨花
母にTEL台風のことあれこれと 由美
朝寒や市に飛び交ふ浜言葉 ひぐらし
月白や山いつぱいの旅終る 無迅

☆ 根本梨花選 ☆
山鳩の尾羽をぱつと秋の中 月子
講義終えふと見上ぐれば十三夜 窓花
碑の翳に戦禍の秋思かな
嵐さりぎんなん色の歩道かな 山茶花
紙ふぶき空に一撒き小鳥来る うらら

☆ 伊藤無迅選 ☆

秋日や一輌だけの貨車走る うらら
台風を押し戻したる楽つづく 海紅 
朝寒や市に飛び交ふ浜言葉 ひぐらし
母として静かなる日々萩括る 月子
秋高し佐渡に前島後島 ひぐらし

☆ 互選結果 ☆

4 見えぬもの見ゆることあり秋澄みて 梨花
    南三陸  
4 初雁や地上の道は消ゆるとも 梨花
3 秋日や一輌だけの貨車走る うらら
3 嵐さりぎんなん色の歩道かな 山茶花
2 講義終えふと見上ぐれば十三夜 窓花
2 一服をほとけの肩に秋の蝶 むらさき
2 碑の翳に戦禍の秋思かな
2 起き抜けの布団の洞や秋の雨 無迅
2 秋の雨供花のセロファン濡らしけり 月子
2 母として静かなる日々萩括る 月子
2 秋高し佐渡に前島後島 ひぐらし
2 朝寒や市に飛び交ふ浜言葉 ひぐらし
2 月白や山いつぱいの旅終る 無迅
2 花上げて茎横たへて雨の菊 海紅
2 風白くまとひて十月桜かな 梨花
2 名画座をシルバー券で秋日和 ムーミン
1 経蔵にふくあきかぜの神寂し むらさき
1 名月や旅路を照らせどこまでも 窓花
1 向う見ずの台風の顔うかがひつ ムーミン
1 冷えし竿の両端に干す旅の靴 無迅
1 母にTELし台風のことあれこれと 由美
1 大楓かぶさる池の紅ほのか
1 夕映えや螺鈿細工か鱗雲 馨子
1 紙ふぶき空に一撒き小鳥来る うらら
1 山鳩の尾羽をぱつと秋の中 月子
1 月見酒今日は誰かと二人酒 ひとえ

☆ 合評 ☆

 皆さんから感銘句や問題句の発表をして頂いた。互選の高点句は梨花さんの二句が占めた。帰省の折に作った句であろうか、震災を詠んだ句が皆さんの胸を打った。
皆さんの発表を聞くと、やはり情景が即目に浮かぶ句や、同じ体験をした句に共感し選をしたとのご意見が多かった。日頃目にした光景、例えば嵐の後の歩道の銀杏の色を詠んだ山茶花句や、山鳩の尾羽を詠んだ月子句に多くの人から発言があった。


☆ 総評 ☆
 最後に先生から、総論ならびにコメントを戴いた。

 今回は選句の基準として「情景が掴めているか」を置いた。一読し情景が把握されている句を俳句的技巧は抜きにして選んでみた。俳句は省略の文学とも言われている。省略するに当っては「情景がつかめて」いないと骨格が定まらず意味不明の句となる。そのような意味で的確に「情景が掴めているか」は、作句の第一歩であろう。
  今日は句会前に植物園などを吟行しようと思ったが、雨だったので大学横の白山神社の境内を約四十分散策した。私は所謂ホトトギス俳句で俳句初学の頃、先輩から写生の基本として、何か心に湧くものがあるまで対象を見つめろ!と言われて育った。写生句が単に眼前の写生に終るか、写生の奥にさらなる余情のある句になるかどうかは、その対象を見つめる姿勢にあるのではないか。そのような意味で、吟行の際に集団で見て歩く事も良いが、一人になる時間、推敲する時間を作句のために確保することは非常に大切であると思う。 


☆ 参加者 ☆ <順不同・敬称略>
谷地海紅・根本梨花・大江月子・椎名美知子・小出山茶花・水野ムーミン・真杉窓花・植田ひぐらし・鈴木松江(選句のみ)・棟方ひとえ・伊藤無迅
<欠席投句者> 宇田川うらら・西野由美・柴田憲・むらさき・佐藤馨子

<伊藤無迅・記>

 

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